(1).接触皮膚炎接触じんま疹

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@.
刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎

 
接触皮膚炎は、慢性の刺激が原因となったもの(刺激性接触皮膚炎)とアレルギー物質が接触して起きたもの(アレルギー性接触皮膚炎)に分けられます。

 接触じんま疹は、アレルギー物質が接触したために即時型の反応、すなわちじんま疹が生じるものです。
 その後、接触部位に炎症反応が起きて湿疹ができると、接触皮膚炎もあるということになります。

 刺激性接触皮膚炎を起こす患者さんには、もともとドライスキンがあります。
 そんな乾燥肌に、いろんな刺激が加わり、たとえば
 ●よだれがついてうつぶせで寝て、シーツにこすれてできた赤ちゃんの顔の湿疹、
 ●頻繁に洗うことで起きる手湿疹、
 ●シャンプーを使いすぎて起きた頭の湿疹、
 ●乾燥肌に衣類でこすれてできた伸側の湿疹
 ●泣き虫のこどもにできた、目の周囲の涙の刺激とこすることでできた湿疹
などが代表的なものです。

 従って、刺激性接触皮膚炎は、皮膚の皮脂の量や質が密接に関わっています。
 いわゆる皮膚のバリア機能の異常ということです。 

 刺激を減らすか、ドライスキンを何とかすれば、ある程度治療になるということです。
 ただし、このドライスキンはアトピー体質の一つにもなっています。
 つまり、刺激性の接触皮膚炎もまた、アトピー性皮膚炎の症状の一つと考えられます。


 いわゆる「皮膚が弱い」という体質は、他に湿疹がなくても、子供の頃にアトピー性皮膚炎があった可能性を示しています。

 刺激性の接触皮膚炎の場合は、アレルギー性のものと比べて、かゆみは強くなく、ほとんどないこともあります。
 手指にできたときは、湿疹のために膠原線維(コラーゲン)が増加し、皮膚が硬くなります。
 皮膚が古くなったゴムのように硬くなると、引っ張られると、伸びにくく、亀裂ができて、痛くなります。

 とはいうものの、主婦仕事をやめない限り、手湿疹はよくなりません。
 ということは、強いステロイド外用剤で一時的改善するのは間違っています。
 私は、刺激性の湿疹については、保湿剤だけで経過をみるか、弱いステロイドで様子を見ています。

A.アレルギー性接触皮膚炎と接触じんま疹の特徴

 一方、
アレルギー性接触皮膚炎はいわゆるかぶれです。

 ●アレルギー性接触皮膚炎は、
 ●化粧品・毛染め・整髪料、
 ●ゴム・手袋、
 ●貼り薬・外用剤、
 ●消毒液、
 ●金属、
 ●植物

 その他いろんな化学物質などが皮膚について/つけて起こった遅延型の免疫反応、湿疹型の反応で、白血球が関与しています。

 刺激性接触皮膚炎に比べて、アレルギー性接触皮膚炎はかゆみが強く、ステロイド外用剤を用いても、原因が除かれない限り、症状は改善されません。


手袋(ラテックス)による手湿疹です。
手掌は角層が厚いために、ラテックスは吸収されにくく、もっぱら
手背に湿疹ができます。

 体内に抗原が侵入してアレルギーを起こすことを、「感作(かんさ)」と呼んでいます。

 食物は腸管免疫が働いて、アレルギーがおきないようにしています(免疫寛容(トレランス))。

 腸管以外のところから抗原が侵入すると、防御・免疫系が働いて、侵入した抗原を排除しようとします。
 このとき免疫系が過剰に/異常に働いて、その抗原に対してアレルギー反応が生じることがあります。

 そんな抗原は細菌やウイルスのことが多いのですが、アレルギー体質があれば、卵や牛乳、ダニや花粉などにもアレルギーが生じることがあります。
 主に、比較的分子量の大きいタンパク質が抗原になっています。

 バリア機能がちゃんとしていれば、皮膚から抗原が侵入しにくくなっています。
 ところが、たとえば手湿疹があり、キズがたくさんあると、そのキズ口から抗原が侵入して、アレルギーが起きます。
 手湿疹のある看護師・美容師・調理師に、いつも触っているもので接触じんま疹やアナフィラキシーショックが起きることがあります。(学会報告 抗生物質による接触じんま疹の一例)

 接触じんま疹は、刺激性のものはなく、ほとんどそれらの物質で起きたアレルギー性のじんま疹型の反応です。
 じんま疹は何もしなければ自然にあとかたもなく消えますが、引っ掻くとひっかき傷があとに残ります。
 最初じんま疹型の発疹で始まり、繰り返したり、原因をそのままにしておくと、炎症反応が加わり、湿疹型に変化することがあります。


 接触皮膚炎や接触じんま疹は、外から原因物質が接触して起きていますので、だいたいは
左右対称ではありません。(学会報告)

 もちろん、左右対称に同じように接触していれば、左右対称です。
 その部位に何かが付いて湿疹ができたときは、そこだけのものです。
 利き腕の右手で触ったものならば、顔面や目や首なら右側、肘窩なら左側、下肢なら右側に発疹ができます。

 アトピー性皮膚炎はしばしば体内のアレルギーが原因になっているときは、利き腕で引っ掻いて症状が強くなっているところはありますが、だいたいは左右対称です。
 右だけ、左だけに湿疹があるということはありません。

 利き腕が右であっても、いつもボールペンなどを右手に持って勉強しているときは、空いた左手で引っ掻いていることがあります。

 化粧品を顔面全体に使っていても、同じ程度の湿疹が顔全体にあるとは限りません。
 普通、接触した成分の吸収のよいところ、たとえば顔面なら目の周辺の症状が強くなります。
 また、引っ掻きやすい方の湿疹が悪くなります。
 紫外線に反応する成分による接触皮膚炎のときは、日光に当たる部分や、日光に当たったときに症状が強くなります。

 接触皮膚炎でもアトピー性皮膚炎であっても、とにかく、湿疹の分布、症状の強さなどにどこか
バランスの悪いところを感じたときは、その理由をじっくり考える必要があります。


非ステロイド系抗炎症剤(モーラステープ)による接触皮膚炎。
肘外側に貼り薬に一致して、境目がはっきりした湿疹局面がみられます。

日光
に当たってさらに症状が強くなっています。
抗炎症剤成分はかなり長く皮膚内部に
残るために、冬場に体に貼ったものが、夏になって衣類が少なくなって紫外線を浴びて、症状が現れることもあります。

B.外用剤による接触皮膚炎

 外用剤による接触皮膚炎については、他で説明していますが、アトピー性皮膚炎の難治化の要因として非常に重要です。
 このタイプの接触皮膚炎にさらに光線過敏が加わっていると、さらに対処が難しくなります。

 非ステロイド系抗炎症剤の貼り薬による接触皮膚炎の場合、紫外線が当たるとひどくなる光線過敏型の接触皮膚炎も合併していることがあります。

 
目薬(点眼剤)も眼の周囲の涙が流れるところに接触皮膚炎をつくることがあります。
 春季カタルは眼瞼結膜にできた湿疹ですが、目薬の接触皮膚炎で起きていることがあります(フルメトロンなどのステロイド点眼剤は特に要注意です)。


点眼剤による接触皮膚炎です。
両眼に点眼していれば、左右対称にかゆみのある湿疹がみられます。
ひっかくと悪化します。
左眼の方が症状が強く、左利きによるものです。
たいていは、利き腕で知らず知らずひっかいています。
ちなみに、使用していた4種類の点眼をパッチテストしましたがいずれも陰性でした。

 目薬に用いられている
塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤やフラジオマイシンなどの抗生剤が原因になっていることがあります。
 塩化ベンザルコニウムは陽イオン系の界面活性剤です。
 オスバンなどの消毒にも用いられており、手の接触皮膚炎の原因になっています。

 接触皮膚炎を起こしやすい防腐剤・消毒剤

1.イソチアゾリン系:強い殺菌・防カビ効果があります。
パラベンに変わるものとして登場しましたが、パラベン以上に接触皮膚炎が多いことが判明。
 ケーソンCG・・・クロロメチルイソチアゾリノンとメチルイソチアゾリノンが含まれています。
リンスオフ(シャンプー・リンス)・ウェットティッシュ・冷感グッズ・壁用接着剤・塗料(シックハウスの原因の一つ)などに用いられています。

2.塩化ベンザルコニウム:陽イオン系界面活性剤で第四級アンモニウム塩です。
防腐剤・殺菌剤・消毒剤として用いられ、いわゆる逆性石鹸です。
とても接触皮膚炎を起こしやすい化合物です。
他に高い濃度では角膜炎症を起こし、低濃度でも角膜ジストロフィーや白内障などの原因になるといわれいます。
消毒剤(オスバン・ヂアミトール・クリンアーズ・サニゾール・ウエルパスなどの製品)、ヘヤリンス・トリートメントなどに含まれます。
洗眼剤(アイボンなど、点眼剤の何倍も入っており危険)・点眼剤(参天製薬など)にも含まれていて、接触皮膚炎の原因になっています。

塩化ベンゼトニウムも近い化学物質です。
マキロン・ハイアミン・エンゼトリン・ベゼトンなどの消毒剤や制汗剤に入っています。

3.グルコン酸クロルヘキシジンヒビテン・マスキン水などの消毒(主に医療用)です。
毒性が強く、ときにアナフィラキシーショックなどの強いアレルギーを起こすことがあります。
接触皮膚炎も起こします。
オロナインH軟膏の主成分です。

4.クロロキシレノール:弱い抗菌剤です。
家庭用消毒剤・洗濯槽消毒剤・セッケンなどに含まれ、接触皮膚炎の原因となっています。

クロロクレゾールも類似の問題点があります。
クロロブタノールも類似の化合物で、医薬品防腐剤として、ジクロード点眼、ボスミンに含まれています。

5.1,3-ジメチロール-5,5'-ジメチルヒダントイン(DMDMヒダントイン):ホルムアルデヒドを放出するドナー型防腐剤です。
シャンプー・リンスに入っています。

6.チモール:モノテルペン系誘導体に分類されます。
タイム様香気を持った防腐剤・殺菌剤です。
サロメチール・アンメルツ・リステリンうがい薬・歯磨き・セッケンなどに含まれています。
外用剤にも含まれているものがあります。

7.2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン:防カビ剤です。
以前コクヨ製のデスクマットに含まれ、回収に至った経緯があります。
ヘルメットに含まれている場合があります。

8.トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン):抗菌剤です。
化粧品・セッケン・シャンプー・リンス・ふけとり剤などに入っています。
発がん性があります。

トリクロロカルバニリド(トリクロカルバン)も同様な防腐剤・殺菌剤です。
固形・液体セッケンなどに入っています。
発がん性も疑われています。

9.パラオキシ安息香酸エステル(パラベン):エステルには、メチル(MP)、エチル(EP)、プロピル(PP)、イソプロピル(iPP)、ブチル(BP)、イソブチル(iBP)などがあります。
非イオン系界面活性剤で、pH8以上で加水分解し、油溶性、タンパク質で不活性化します。
ポリフェノールに分類され、野菜果物にも含まれています。
静菌作用があり、主に飲料向け防腐剤(0.1g/kg以下)として、また食品・医薬品・化粧品の防腐剤として大量に用いられています。
内分泌攪乱物質の一つです。
接触皮膚炎のヨーロピアンスタンダードにはパラベンミックスとなっています。

10.ヒノキチオール:トロポリン誘導体で、最初台湾ヒノキから分離されました。
抗菌作用がありますが、香料として歯磨き・ヘヤトニックなどにも用いられています。
催奇形性が疑われています。

11.ピロクトンオラミン:抗菌・防腐剤・育毛・ふけ取りなどの作用があります。
商品名オクトロピクス。

12.フェノキシエタノール:弱い防腐剤で、お茶などにも含まれる天然成分です。
パラベンに代わるものとして頻用されています。

13.フマル酸ジメチル(DMF):防カビ・抗炎症・神経保護作用(多発性硬化症治療薬として使用)があります。
昇華性があります。
中国製家具・革靴類・クロックスとその類似品など用いられています。
接触皮膚炎が多数報告されています。
類似化学物質として、フマル酸ジエチル(DEF)、フマル酸ジブチル(DBF)、マレイン酸ジメチル(DMF)、マレイン酸ジエチル(DEF)、マレイン酸ジブチル(DBF)などがあります。

14.α-ブロモシンナムアルデヒド:昇華性のある防カビ剤です。
防カビシートで接触皮膚炎の報告があります。

15.ヘキサクロロフェン:消毒剤。
家庭用洗剤や化粧品に用いられ、普通の接触皮膚炎の他に、光アレルギー性もあります。
乳児に神経毒性が疑われています。

16.ヘキシレングリコール:防腐効果がある保湿剤として化粧品に用いられています。
防腐剤として、ドライクリーニング用洗剤・油性オイル・木材に使用され、皮革紙繊維などの浸軟剤・軟化剤にも用いられています。

17.ポピヨンヨード:ポリビニルピロリドンとヨウ素の複合体です。
黒褐色の外用消毒剤ですが、うがい薬もあります。
以前よりイソジンという商品名で知られています。
抗菌・抗カビ剤として用いられています。
まれにアナフィラキシーショックのような重大な副作用があり、接触皮膚炎も多くみられます。
ヨード過剰症も心配で、甲状腺機能亢進症・低下症の患者さんは使わない方が無難です。

ヨードホルム(トリヨードメタン)もまた殺菌作用のあるヨード製剤です。
CHI3の構造しており、トリハロメタンの一種です。

ヨードチンキヨウ素をエタノールに溶かしたもので、ヨウ化カリウムが添加されています。
エタノールの代わりにヨウ素をグリセリンに溶かしたルゴール液もあります。
ヨードチンキはヨウチンとも呼ばれ、家庭用消毒剤として広く用いられていました。

18.マーキュロクロム液赤チンとも呼ばれ、安価な消毒剤として広く用いられていました。
マーキュロクロム液の主成分メルブロミンには臭素の他に水銀が含まれていました。

19.マキロンsは、赤チンがしみる・色が付くという赤チンに代わるものとして登場し一気に普及しました。
マキロンは、塩化ベンゼトニウムを主成分として、アラントイン、マレイン酸クロルフェニラミン(抗ヒスタミン剤)、ジブカイン(局所麻酔剤)、ナファゾリン(血管収縮剤)など、消毒には必要がない余計な物質が含まれており、おすすめできません。

20.木酢液:備長炭などの木材の乾留液の上澄みです。
弱酸性で防腐効果があります。
入浴剤にも用いられます。
変異原性が疑われています。

21.ラウロイルサルコシンナトリウム(ココイルサルコシンナトリウム)(ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム):アミノ酸系界面活性剤、シャンプー・リンス・洗浄剤などに用いられています。

22.レゾルシン(レゾルシノール):毛染めにも用いられます。
強い還元作用があり、防腐効果があります。
皮革なめし剤にも用いられています。
以前三井化学岩国大竹工場で爆発事故を起こしたことがあります。

(注)ごく一部の主要なものを示しました。
接触皮膚炎には刺激性とアレルギー性がありますが。消毒剤・防腐剤はその両方の問題点を持っています。




アレルギー性結膜炎とそれによるアレルギー性眼瞼炎に対して、フラジオマイシンの入ったネオメドロールEE眼軟膏による接触皮膚炎と考えられます。
私はアレルギー性結膜炎には、ステロイドを含まないインタール点眼か防腐剤を除いた1回使い捨てのインタールUD点眼剤を主に用いています。


C.毛染め

 
毛染めの接触皮膚炎は、まず髪の毛の生えた地肌(被髪頭部)に発疹ができますが、むしろ髪の毛の周辺の皮膚や耳の後ろに症状が強く表れます。
 日が過ぎるとともに髪の毛が伸びてくるために、被髪頭部の発疹は軽くなります。
 毛が伸びて白い毛が目立たないようにと、毛根までたんねいに毛を染めると、毛染めのアレルギーが長く続くことになります。
 毛染めの付いた髪の毛を手で触って、その手で他の部位を触ると、眼周囲や首回りにも湿疹ができます。


毛染めによる接触皮膚炎で湿疹がよくできるところを示しています(右利きの患者さんの場合)。
耳の後ろ、眼周囲に注目。

 毛染めのついた髪の毛をはさんでカットすると、美容師の左指(U指とV指の間)にも湿疹が見られます。
 接触皮膚炎を起こす毛染め成分は、主にパラフェニレンジアミン(PPDA)、アミノフェノール類などの酸化染毛料です
 酸化染毛料は黒染めの成分で、最初無色ですが、酸化されると黒色に変化します。
 酸化されていない成分が残っていますと、それがアレルギーを起こします。
 PPDAはプロカイン・ベンゾカインなどの局所麻酔剤(局麻剤)、p-aminobenzoic acid(PABA)などの紫外線遮光剤、スルホアミドなどと交差反応を起こすことがあります。
 PPDAは光アレルギー性を示すこともあり、紫外線に当たるところだけに発疹ができることがあります。
 高校生が休みの間に茶髪にして、新学期が始まって黒髪に戻すと、そんな毛染めでしばしば接触皮膚炎を起こします。

D.化粧品

 アイシャドウ、アイライン、アイプチなど眼周囲に用いられる化粧品は、当然その部分に左右対称の湿疹ができます。
 エクステなどに用いられる接着剤成分も接触皮膚炎をおこします。

 女性の場合、顔の湿疹のかなりの部分を化粧品・整髪料・染毛剤(毛染め)による接触皮膚炎が関係しています。
 その意味で、どこまでアトピー性皮膚炎であり、どこまで接触皮膚炎なのかはっきりしない状態も多いようです。

 ただ、アトピー性皮膚炎が軽くなり、顔の湿疹がニキビに変わり、じんま疹や気管支喘息、アレルギー性鼻炎が表面に出てきた時のほうが、金属・化粧品などによるアレルギー性接触皮膚炎は多くなります。

 顔全体につけている化粧品であっても、症状にそれぞれ特徴があります。
 たいていは、眼囲の皮膚の角層の薄いところから始まり、顔の他の部位より眼囲の症状がしばしば強くなります。
 紫外線吸収剤が接触皮膚炎の原因の時は、しばしば薬剤が紫外線を吸収して発疹をつくるために、多くは露光部に症状が強くなります。
 頭部につけている整髪料・毛染めが原因の時、被髪周囲に加えて、手で触るために、眼囲にも湿疹ができます。

 近年、肝斑や炎症後の色素沈着に対して、美白を目的とした化粧品で、過剰に働いて脱色素斑ができる症例が報告されています。
 その代表が、カネボウ化粧品に含まれていたロドデノールによる白斑症状です。
 ロドデノールはシラカバエキスから抽出・精製されたもので、主成分は4-(4-ヒドロキシフェニル)-2ブタノール(チロシナーゼ阻害作用があります)です。
 白く抜けた状態が治らないために(白斑にはステロイド外用剤が用いられますが、これの副作用が加わることがあります)、訴訟になっています。

 美白(他でも触れています)で用いられている薬剤はとてもたくさんあります。
 たとえば、ハイドロキノンは強い還元作用があり、漂白剤に用いられていますが、チロシン合成阻害剤としても働いています。
 肌にハイドロキノンを外用すると、間違いなく白くなりますが、まだらに抜けたり、白くなりすぎて目立つこともあります。
 ハイドロキノンを4%以上含む美白化粧品は危険です。
 美白化粧品として無難なものは、皮膚吸収を改善した様々な活性型ビタミンC(L-アスコルビン酸)かもしれません。
 それでも光線過敏型も含めて接触皮膚炎には注意が必要です

 化粧品による接触皮膚炎で起きる問題は、接触皮膚炎を起こしている成分が、もしかすると何年も皮膚内部に
残る可能性があること、それらの成分が紫外線に反応する可能性があることです。
 それだけに、接触皮膚炎を起こしている可能性がある化粧品は、できるだけすぐに止めることです。
 もったいないからと、ステロイド外用剤を使いながらその化粧品を使っていると、正常皮膚に戻らなくなります。
 そんな状態をアトピー性皮膚炎と診断しているだけかもしれません。


化粧品、整髪料、セッケン、シャンプーなどの箱容器は捨てないこと。
接触皮膚炎がおきたとき、どの成分が原因なのか、あとで調べるときに参考になります。
これらを購入するときは、必ず成分内容を見て、確認しましょう。


 アレルギー体質のある人の化粧品選び原則は、
@.パラベンなどの防腐剤や界面活性剤(ヒルドイドローションやビーソフテンローションは保険がきいて使いやすいですが、これらどちらも入っています)は含まない。
A.天然や合成にかかわらず香料は含まない。
B.紫外線吸収剤を用いていない。
C.紫外線散乱剤についても、できれば落ちにくくて、落としやすいもので、SPF30 以下のもの。
D.植物エキスや動物成分などの余計なタンパク質は含まない。
E.ナノレベルの粒子になると毛孔や汗孔に入り込みやすく、異物反応やアレルギー反応が起こりやすくなる。


 「そんな化粧品はない」。
 確かにそうかも知れません。
 だけど、捜せば必ず見つかります。
 見つからなければ、自分で作るだけです(当科では、グリセリンを処方して、自家製の化粧水を作ってもらっています)。
 化粧品の素材売り場はあちこちにあります。
 化粧品を作るとき、原料粉末を吸い込むとアレルギーが作られますので注意して下さい。

 自家製化粧水の作り方

(化粧水のむいた患者さん)
@市販のどの化粧品を使っても合わない人。
Aワセリンなど油性保湿剤の合わない人。

(原材料)
@ミネラルウオーター・・どのメーカーでもよいが、あまり塩類濃度の高くないもの。
pHは中性又は弱酸性。
pH7.5を越えるものは農薬などの化学物質を含んでいる可能性があります。
蒸留水はむしろ危険です。

Aグリセリン・・構造式がエタノールに近く、アルコールが全く飲めない人には合わない可能性があります。
安価で全身どこにでも使えます。
当科では、200-500mlのペットボトルにグリセリン濃度が3%から15%程度を勧めていますが、患者さんお好みで%は決めてもらっています。

以下、グリセリンのみでは保湿効果が少ない患者さんに、よく用いられる比較的安全性の高い保湿剤です。
ただし当科で保険適用で処方できません。
東急ハンズのような自家製化粧品原料を販売しているところで購入してもらう以外にありません。
安くはありませんし、結構混ざりものの多い不良品も多く、じっくり表示を見て選んで下さい。

以下のもの混ぜる濃度はお好みですが、せいぜい数以下です。

Bヒアルロン酸・・ヒトの皮膚や関節などにもともとあるものですが、ヒトからとったものではありません。
近年では、細菌に作らせていますので、多少細菌成分が混入している可能性があります。
それでも化粧水に混ぜるものとして捨てがたいところがあります。

Cスクワラン・・これも人の生体成分です。サメの肝油から精製されていますが、おかげでサメが減っています。
無色の液体で皮膚にとてもなじみますが、塗り心地が良すぎる分、長持ちししない欠点があります。
以前、コープのスクラワンオイル(少量のレシチンとビタミンEが入っていましたが)が安くて、手に入りやすいということで紹介していました。
最近はそのコープ製品はなくなっています。
やはり東急ハンズなどで購入してもらうほかありません。

D合成セラミド・・セラミドもまた生体成分で、皮膚にありスクワランもセラミドの一種です。
セラミドはスフィンゴリビッドの一種で、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合したものです。
細胞膜の主要成分です。アトピー性皮膚炎の皮膚の異常に関与しています。
花王がこのセラミドを合成し、キュレル製品に用いています。
合成セラミドはなかなか手に入りにくい可能性があります。

Eツバキ油・・アトピコオイルがよく知られています。
アトピコについては当科外来に製品見本があります。
オレイン酸・リノール酸・パルミチン酸など主要脂肪酸です。酸化されにくく、常温で液体です。
よく似たものにティーツリーオイルがありますが、接触皮膚炎を起こしやすいという報告があります。

Fオリーブ油・・これは保険適用があり、外来で処方できます。
コールドプレスして製造されたエクストラバージンオイルがおすすめです。
これもツバキ油と同様オレイン酸・パルミチン酸・リノール酸などが主要脂肪酸です。
紫外線で変性するため、保存は冷暗所が望ましいようです。

Gホホバ油・・ナデシコ目シモンジア科からワックスの一種です。
ワックスはロウのことで皮膚の保湿効果は高いですが、多少べとつくことがあります。
かぶれにくく、いいところがあります。

H尿素・・これも生体成分ですが、顔につけると刺激感があり、角層の薄いところにはむきません。
首から下にはよいところがあります。

 化粧品が原因で接触皮膚炎が起きている時は、問題の化粧品を使っている限り、症状はよくなりません。
 むしろ、ステロイド外用剤を使っていると、接触皮膚炎にステロイドの副作用が加わるだけです。

 強いステロイド外用剤を使っていて、湿疹がよくならないために、それを止めると、しばしばステロイドのリバウンド現象を起こして、全身真っ赤の湿疹や、顔が眼が開かないくらいパンパンに腫れ上がって、患者さんがやってきます。

 化粧しながらステロイド外用剤やステロイドの内服するのは最悪です。
 どの化粧品が原因か分からない時は、気持ちは分かりますが、一度すべての化粧品を最低2カ月くらい止めてみることです。

 絶対に大丈夫というアレルギー用の化粧品に変えてみるのもよいかもしれません。
 アレルギー用といっても、UVタイプの化粧品は、アレルギー用になっていない可能性があります。
 私が羽曳野病院に勤務していたとき、シールドウォーターを共同開発したこともあり、とりあえずアクセーヌ化粧品をすすめています。

 どうしても合わないときは、化粧品のことは忘れることです。
 「素肌の方が美しい」という話はあちこちにあります。
 パソコンで画像修正した美肌に惑わされてはいけません。

 紫外線散乱剤

紫外線散乱剤は吸収剤と比べて種類は多くありません。
代表的なものは、
1.酸化チタン(主にUVBの防御、UVAに全く効果がないとはいえません。)
2.酸化亜鉛(主にUVAの防御、UVBに対してもますまずの効果があります。亜鉛華軟膏・カチリの主成分)
3.酸化鉄(汗疹の薬剤、カラミンローションの主成分)
4.シリカ(二酸化ケイ素、粒子内部に微細な空気層のある無孔質、低屈折率で透明性がある。吸湿性。)
5.酸化ジルコニウム(シリカと共に酸化チタン被覆処理に用いられ、ナノサイズで透明性がある)
6.酸化アルミニウム(アルミナ、分散・被覆処理に用いられます)
などがあります。

一般の紫外線カットの化粧品は、主に酸化チタンと酸化亜鉛、いろんな紫外線吸収剤が組み合わせて作られています。
散乱剤はどうしてもつけると白くなるために、以前は主にファンデーションに用いられていました。
近年散乱剤は透明化するために、ますますナノ化され、毛孔に入りこむと専用の洗浄剤で洗ったくらいではとれないものが多くなっています。
毛孔がつまると、当然のことながら、尋常性ざ瘡(ニキビ)が多くなります。
実際、夏季に悪化したニキビはUV化粧品が原因で、UV化粧品を止めないと良くなりません。

近年さらに、散乱剤にシリカや酸化ジルコニウムなど被覆材を併用するものと、シクロペンタシロキサンなどの変性シリコンが分散剤・吸着性向上・耐水性向上のために用いられています。
もともとジメチコンなどの変性シリコンは皮膚や毛髪に付けば簡単にとれにくくするために用いられています(アタマジラミに効果があるという報告があります)。
シクロペンタシロキサンは揮発性で、極めて微量で半導体に異常を起こす可能性があります。
頭髪のリンス・コンディショナーで携帯に異常が起きる可能性があるということです。

酸化亜鉛を含む亜鉛華軟膏は、子供、時に市販の化粧品が合わない成人の光線過敏症の予防に用いています。
種痘様水疱症、光線過敏型湿疹に対しては、弱いステロイドを追加したALZ-1を処方しています。

E.植物

 接触皮膚炎は、うるし、ハゼ、ギンナン、菊、サクラソウ、チューリップの球根、ラナンキュラスなどの植物でも起こります。
 一般に、加熱処理してタンパク質が変性すると、抗原性が失われ、接触皮膚炎が起きなくなりますが、植物から抽出された植物エキスが絶対に大丈夫とは限りません。
 特に、植物を生のまま自家製の化粧水を作ったときなどは、非常に危険です。


草笛で遊んでいてできた口囲の湿疹です。
草のタンパク質がそのままついて、強い症状になっています。
シャンプーや化粧品に含まれる植物エキスでも、同じような湿疹ができる可能性があります。
患者は中学生、もともとアレルギー性鼻炎・花粉症とアトピー性皮膚炎があります。


 イネ科のアレルギーがあると、草むしりで手に湿疹でき、それが原因となり全身に湿疹が広がることもあります(
自家感作性皮膚炎)。

 自家感作性皮膚炎はすべての接触皮膚炎で起きる可能性があります。
 たとえば、手首の時計の金属による接触皮膚炎のために、顔面から全身に湿疹ができた患者さんがいました。
 接触皮膚炎を起こしている物質が、血液やリンパ系を通じて広がったということです。

 ウルシや
ハゼノキによる接触皮膚炎は、当初は軽症であっても、毎日あとからどんどん広がります。(下の写真を参考)
 ウルシオールという成分が原因になっています。
 
イチョウの実のギンナンにも同様な成分(イチオール)が含まれています。
 加熱していないギンナンの皮をむく、ととても危険です。
 日本人の1割くらいでこのウルシオールにアレルギーがあるとのことです。
 なお、カシューナッツ、ピスタチオ、マンゴも、被子植物アオイ群ムクロジ目ウルシ科に分類されます。


マンゴ・ギンナンを含めてウルシ科のナッツです。
加熱されていると大丈夫かもしれませんが、用心は必要です


ハゼノキによる接触皮膚炎です。
とても炎症が強く、自家感作性皮膚炎を起こして、他の部位にも広がりました。
この患者さんの場合、強いステロイド外用剤で広がるのを止めるしかありませんでした。
あまりにもひどければステロイド内服しかないこともあります。
ハゼノキは秋になると美しく紅葉します。
近くを通っただけでかゆくなるという患者さんもいます。
バス停のずっと上の方に生えていたハゼノキから、雨上がりのしずくがついて湿疹ができたという患者さんもいました。


 
サクラソウ皮膚炎は、サクラソウの花弁や葉・茎の毛に含まれるプリミンprimin(2-メトキシ-6-ペンチル-p-ベンゾキノン)という物質が原因になっています。
 サクラソウは、ツツジ目サクラソウ科サクラソウ属に分類されます。
 サクラソウ科には、他にシクラメン属、ルリハコベ属などがあります。(
シクラメンの葉や茎の汁を触ると、接触皮膚炎が起きることがあります)
 サクラソウには実にいろんなものがありますが、サクラソウ皮膚炎を起こすものとしてプリムラ・オブコニカがよく知られています。
 ただ、プリムラ・オブコニカは接触皮膚炎を起こしやすいせいか、最近植物センターではあまり見かけません。
 他のプリムラ、プリムラ・マラコイデス、プリムラ・ジュリアン、プリムラ・ポリアンサなどでも同じように接触皮膚炎が起きるといわれます。
 プリミンをふくまないプリムラ・オブコニカも開発されています。
 プリミンは夏季に多く、寒い冬季には少なくなります。
 プリムラの枯れた花びらを素手でつまんでとるのは危険です。
 その手で眼を触ると、目や眼の回りが真っ赤に腫れ上がります。
 手にも当然かゆみのある湿疹ができます。
 ガーデニングの好きな女の人、枯れた花が気になる女の人によく見られます。
 室内にサクラソウを置いておくと、プリミンが空気中に飛散して、アレルギー性結膜炎や鼻炎、咳嗽を引き起こすことがあります。


プリムラ・マラコイデスです。


プリムラ・ジュリアンです。

接触皮膚炎の原因油脂としてシアノバターがあります。
シアノバターは、アフリカ原産のシアノバターノキの種子から作られ、融点が高く、常温では固体です。
シアノバターノキはツツジ目アカテツ科に属し、サクラソウやキーウィに近いものです。
近年、ハンドクリームやセッケン、シャンプーなどに用いられ、使っているうちに感作されて、接触皮膚炎を起こします。
キク科などの双子葉植物にアレルギーがある人が、それが入った化粧品を顔面につけるのはとても危険です。


F.金属

 
金属による接触皮膚炎は、安物のピアスやネックレスなどがよくみられます。
 多くはニッケルやコバルトによるものです。

 金属アレルギーは、接触したところに汗をかくと
汗で溶け出すために、夏場に多い傾向があります。


安物?のネックレスでできた発疹です。

 
おへその周囲の湿疹は、たいていは、バックルかジーンズの裏の金属が原因になっています。
 下に下着があると油断していると、ひどい症状になり、いつまでもよくなりません。
 そんなアレルギーを起こすバックルは、できるだけ早く捨ててしまうことです。
 さもなければ、ジーンズの金属部分に布をぬいつけて、おおうことです。

 
ニッケルは、安物の装飾品、メッキ、メガネフレーム、コイン・メダル、ブラのワイアー、ドアノブ、ハンドバッグ、ハサミ、ジッパー、オフセット印刷、ガラス、エナメル、殺虫剤・抗カビ剤、電池、ペースメーカー、点滴針、缶詰、カキ、ココア・チョコレートなどに含まれています。

 
コバルトは、安物の装飾品、レジン、入れ墨、インク、クレヨン、現像液、ゴム製品・なめし皮、セメント、触媒、陶器、粘土、はえ取り紙、ビタミンB12などに含まれます。
 ときに紫外線が当たると湿疹が誘発されたり、悪化する光アレルギーも起こります。

 
クロムは、皮革製品のなめし剤、漂白剤、黄色塗料、インク、マッチ、セメント、ゴム、ガラス、リノリウム、メッキ、ステンレス、溶接ガス、骨結合金属、ラジエター液、木材消毒液、緑の入れ墨などに含まれます。

 
パラジウム歯科金属、装飾品、電気メッキなどに含まれます。
 インジウムやイリジウム、
水銀(アマルガムなど)、銀なども歯科金属に含まれています。
 銀塩は発汗対応剤に用いられ、防かび剤として携帯電話などのコーティング剤にも使われています。

 
による接触皮膚炎もあります。
 パッチテストの陽性反応は、しばしば1週間程度過ぎてからみられます。
 1週間前につけた純金のネックレスが原因で、湿疹ができることがあるということです。

 白金(プラチナ)やチタンの接触皮膚炎もありますが、患者さんはあまりおられません。
 むしろ、それらに含まれる不純物による場合の方が多いようです。

 接触皮膚炎を起こす金属が体内にあるとき、あるいは、そんなものを食べているときどうなるかという問題があります。
 よくあるものが歯科材料ですが、骨折の治療に用いられた金属、手術の縫合に用いられた金属クリップ、ペースメーカーなど、いろんなものがあります。
 それらが原因として生じた湿疹が、アトピー性皮膚炎と果たして区別できるか、分かりません。

 歯科金属によって、掌蹠膿疱症やいろんなタイプの湿疹や蕁麻疹ができます。
 そんな湿疹が水疱や膿疱、乾癬様の角化局面ではなく、肘窩や膝窩のかゆみを伴った湿疹のときは、まるでアトピー性皮膚炎です。

 
重金属は、穀類やいも類などに蓄積しやすく、栽培された土壌の品質に左右されます。

 カドミウム米は富山の神通川や新潟の阿賀野川に沿ったところで問題になり、イタイイタイ病として公害病に認定されています。
 日本には、現在や過去に上流に鉱山がある土地はたくさんあります。
 渡良瀬川・利根川流域で、足尾鉱毒事件を起こした旧足尾銅山などは、よく知られています。

 重金属で汚染された土壌のは、その金属の規制濃度を超えたものは政府が買い上げていますが、超えていない程度の濃度の米は市場に出回っています。
 重金属がたまりやすい根菜類・いも類などは、規制の対象にもなってませんし、実際測定もされていません。
 ハイテク工場や化学工場から流れ出たものが、野菜類に付着・濃縮されていても気がつかない時代です。

 金属アレルギーがある患者さんは、できれば同じ産地の食物ばかり食べるのは避けた方がよいかもしれません。
 (水道水の水質基準についてはこちらを参考にして下さい)
 (土壌汚染の基準についてはこちらをどうぞ)

 それでも、ヒトの体を検査すると、ほとんどのヒトにそれなりの量の重金属が蓄積しています。
 原因不明の腎不全の腎臓に、カドミウムが蓄積していることがあります。
 うつ病の患者さんの脳神経組織に、鉛やヒ素が大量に見つかることもあります。

 金属アレルギーの診断は、パッチテストで判定します。
 持参した金属を直接貼付することもありますが、イオンの状態になっていないと陽性にならないことも多いようです。
 普通、パッチテストのスタンダードを用いて検査します。
 というものの、危険な金属、鉛・カドミウム・ヒ素・水銀については、パッチテストは行いません。

G.化学物質
他のところにもありますのでそちらも参考にして下さい。12.アトピー性皮膚炎と化学物質

 今の時代は訳の分からない化学物質であふれています。
 まさに知らぬが仏。

 口から入っているものでは添加物・農薬などはともかく、水や食物からいろんな化学物質が体内に入っています。
 (水道水の危険性についてはこちらをクリック

 化芽物質によって、皮膚科的には、全身性接触皮膚炎、薬疹・中毒疹、アトピー性皮膚炎・貨幣状湿疹・掌蹠膿疱症・尋常性乾癬というような発疹疾患ができます。

 それが脂肪に溶ける脂溶性のものであれば、脂肪組織や肝臓に蓄積します。
 体内に蓄積した化学物質は、アレルギーの原因になりますが、肝障害・腎障害・白血球数の減少・様々な神経障害・不眠/うつ/統合失調症などの精神障害・不妊/子宮内膜症などの婦人科疾患・慢性疲労症候群などいろんな病気を引き起こします。

 (環境の出生率に対する影響についてはこちらを)
 (ホルモン異常とアトピー性皮膚炎の関係についてはこちら)

 原因がはっきりせず、白血球数の減少がみられたときは、化芽物質や放射線(2011.3.11以後突然白血球数が減少している患者さんがいます)の影響も考慮すべきと考えられます。

 とすればどうしたらよいかと、患者によくたずねられますが、一番良いのはまず環境を変えて、改善があるか検討することです。

 以前はよく、1カ月くらいヨーロッパをユーレイルパスを使ってケチケチ旅行をしてみたらどうですかというような提案をしたこともありました。
 とにかく、1カ月以上長めに自宅を離れて改善効果をみることです。
 こんなことをいうのは、引っ越して湿疹やじんま疹、精神状態がよくなった患者さんたくさんいるからです。
 高いお金を出して借ったばかりのマンションを果たして引っ越すことができるかといえば、不可能かもしれませんが...

 化学物質は口からだけでなく、鼻から吸い込んで肺に入るものや皮膚から直接は入るもの(接触皮膚炎です)があります。
 (PM2.5についてはこちらを参考に)
 (アトピー性皮膚炎と環境の関係を調べた大阪府の調査報告はこちらに)
 住宅環境の化学物質が原因の時は、シックハウス症候群と呼ばれています。

 皮膚から入って、湿疹や接触じんま疹を起こすものも一杯あります。
 例えば、中国製の衣類を洗わないで着て湿疹ができた患者さん(原因物質は防虫剤・防カビ剤・防しわ剤などいろいろあります)。


衣類に付いているタグで起きたアレルギー性の接触皮膚炎です。
中国製衣類を洗わずに着たためです。
タグに何が含まれていたか分かりませんでした。
この衣類を着るのを止めて、ステロイド外用剤をつかっているとよくなりました。
洗えば症状ができなかったかどうかは、分かりませんでした。


 クリーニング液が残った衣類で起きるクリーニング皮膚炎(クリーニング工場で働いている人も湿疹・じんま疹、その他内科疾患ができることがあります)。

 ペンキ・塗装職人も湿疹やじんま疹が良くできます(ごつい長袖を着て、N95レベルのマスクするように指導していますが、厚くても外すなと)。

 ハウスの中で、農薬まみれになっている農家の人も湿疹・じんま疹・その他内科疾患がよくできます(この種類といった特定のもので起きやすく、できればアレルギーを起こす農薬は使わない方がよいのですが)。
 みかんの消毒が始まると、湿疹ができるという患者もいます。
 毛虫がでるからと、会社で消毒した樹木に近づいただけで湿疹ができた患者さんがいました


合成ゴム・プラスチックのはきものを裸足ではくと、密着して、こすれるところに湿疹ができることがあります。
夏によくできます。


 以前はクロックスで足に接触皮膚炎ができましたが、相変わらず夏に裸足でサンダルをはいて、当たったところに湿疹がでて当科にやってくる患者がいます。
 クロックスからは、フマル酸ジメチルが原因物質として検出されました。
 中国製家具や皮靴などからでも検出されています


サンダルの当たるところに湿疹ができています。
ここまでひどくなる前に、サンダルをはくのを止めるべきでした。

 化学工場に勤めている患者にも、しばしば原因不明の湿疹やじんま疹ができます。
 研究室などで、いろんな化学物質に接触している患者さんによくできます。
 できるだけドラフトで処理するようにと説明していますが、難しいことも多いようです。

 化学工場の周辺住民にも、似たようなアレルギー症状がみられることがあります。
 処理排水による影響も無視できません。

 化学工場に勤めている患者さんに、白血球数の減少や肝障害など免疫的・内科的変化がみられることがあります。
 不眠症などの精神的障害、末梢神経炎などの神経障害もときにみられます。

 ただいろんなことを総合的に考えると、簡単に会社を辞めるようなことをしてはいけません。
 まず仕事内容を変えるか、部署を変えるか、どうすればよいか、会社側とじっくり話し合うべきです。

H.接触皮膚炎の問題点

 プラスチック材料が体内に侵入したとき、自己免疫疾患に似た症状が現れることがあります。
 アゴの骨折の治療に用いられたプラスチックでSLE様の症状がでた患者を経験したことがあります。
 乳房の整形に用いられた材料でも生じます。
 もっと多く使われているものは、手術で用いられている縫合糸です。
 体内に残った縫合糸がアレルギーの原因となるかについては、疑わしいと感じる患者さんはいましたが、証明できていません。

 アトピー性皮膚炎患者さんでも、化粧品や整髪料、毛染めなどの接触皮膚炎を合併していることがあります。
 そんなかぶれやすい患者さんほど、外用剤などで接触皮膚炎を合併していることがあります。

 アトピー性皮膚炎のなおりにくい原因が接触皮膚炎や自家感作性皮膚炎、ということもまれではありません。
 ときどき、何をつけても湿疹ができるとか、赤くなるとか、かゆくなると訴える患者さんがいます。
 実際、すべての抗原にRAST値が上昇しているのと同じように、世の中のすべてのもので皮膚に接触すると、湿疹やじんま疹ができる患者さんがいます。
 一体全体、何がそんな状態を招いたのか、と言いたいところがありますが・・・もちろん怪しいのはステロイドということになります。

 一方、もともとアトピー性皮膚炎は、原因不明の奇妙な治りにくい湿疹とされてきた歴史があります。
 何か特定の原因が明らかにされ、それを除くことでよくなれば、結局、全身性の接触皮膚炎とするという意見はあります。

 接触皮膚炎の診断は、8. アトピー性皮膚炎の検査の見方の中で述べています。 
 原因抗原を用いた
パッチテストで行われます。
 外用剤の場合は、体を半分に分けて、左右に違うものを外用して比較検討する左右比較試験が有用です。


金属のパッチテストです。
3日目の判定で、いずれも陽性です。
上から、六価クロム、ニッケル、コバルトです。



 
天然ものは、いろんな植物動物
アレルギーがあれば

危険

 
植物エキス入りの
シャンプー・セッケン・化粧品は
使わないこと。

 


H.接触じんま疹

 接触したものがじんま疹を起こすことがあります。

 
ペットを触って眼がかゆみを伴って赤く腫れるときは、ペットによる接触じんま疹です。
 毎日繰り返していると、炎症が加わり、眼の周囲の湿疹に変化し、なおりにくくなります。
 こんなことを毎日繰り返しているうちに次第に反応がにぶくなり、同じペット触っても、じんま疹症状が現れなくなることがあります。
 一方で、
ペットの毛やフケを吸入すると、全身のいろんなところにかゆみの伴った湿疹が現れます。
 このときの発疹を、ペットによる接触皮膚炎と呼ぶべきか、接触蕁麻疹とするか、それとも単にアトピー性皮膚炎とするか難しいところです。

 
卵アレルギーのある子供がケーキを手づかみで食べて、クリームのついた手で顔や目の周りを触って顔や眼が赤く腫れ上がるのも、卵による接触じんま疹です。
 乳幼児が卵などを食べこぼしても、口の周囲に接触じんま疹が現れます。
 
 
前述しましたように、手湿疹のある看護師が、抗生剤の点滴をつくっているうちに、びらん・亀裂のある手指から入り込んだ抗生剤に対して接触じんま疹が起きることがあります。(学会報告)
 パンスポリン/ハロスポアという抗生剤がこれを起こしやすいといわれています。

 同じようなことは、美容師や理容師の手にも起きます。
 パーマ液や毛染め、化粧品を触ると、かゆみを伴った接触じんま疹がみられます。

 手湿疹のあるスシ職人に、しばしば触っている魚やエビ、イカ、たこに対して接触じんま疹が見られます。
 このような接触じんま疹は続けていると、炎症反応が加わり、接触皮膚炎に変化することも多いようです。

 最近、
加水分解小麦による接触じんま疹が、学会であちこちから報告されています。
 茶のしずくセッケンとしてマスコミで話題になりました。
 当科でも、それのシャンプー・セッケンで
眼の周りに湿疹の症状が強い患者が来院しています。

H.植物成分による経皮感作

 加水分解小麦は、小麦を酵素で加水分解して分子量を小さくし、皮膚に入りやすくして、保湿効果を高めることをねらっています。

 化粧品やセッケンなどに用いられている加水分解された蛋白質には、他に、加水分解ヒアルロン酸、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解酵母エキス、加水分解米コウジなど100以上の種類があり、加水分解小麦と同様、とても危険です。

 コンキオリンは真珠・アコヤ貝を原料としているとのことですが、うさんくさいこの上ないようです。
 ヒアルロン酸やコラーゲンはヒトにもありますが、加水分解されるとタンパク質の高次構造が変化し、抗原性が高まります。

 一般に蛋白質やペプチドが、消化器以外の部位、皮膚や気管支、鼻粘膜から浸入すると、それらが抗原となってアレルギーがしばしばアレルギーが起きます(アレルギーを起きさせることを
感作かんさといいます)。
 ケーキ屋さんに勤めると、小麦粉を吸い込んだり、皮膚についたりするために、小麦のアレルギーができることがあります。

 中途半端に小麦タンパク質(グルテン)の分子量を小さくして、皮膚に入りやすくなっていることで、強い小麦のアレルギーができたようです。
 この加水分解小麦は、セッケン、シャンプー、化粧品、ハンドクリームなどいろんなところで用いられ、それらの製品を使って、かゆみを伴って顔全体が腫れたり、アナフィラキシーショックも起きています。
 お茶のしずくセッケンで、小麦による食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)を誘発された患者も、多数報告されています。

 近年、天然の物が安心・安全ということで、様々な
植物成分や動物成分が外用剤に用いられています。
 植物のアレルギー、たとえば花粉症などがあれば、アレルギーを起こす成分を含んだ塗り薬を使っていることになります。
 花粉を全身に塗りたくっているようなものです。
 成分は加熱変性しているから大丈夫、ということにはなりません。
 もちろん、すべての植物成分がアレルギーを起こすわけではありませんが、少なくとも花粉のアレルギーの患者さんは、植物入りの化粧品やシャンプーなどは避けた方が無難です。

 
柿渋入りのセッケン・シャンプー・歯磨きは危険


平成25年11月になり、カキ(柿)を食べて口腔アレルギー症候群が起きた患者さんが多数受診しています。
それが起きた原因を問診していますと、柿渋セッケンを使っている患者さんが何人かいました。
口囲に湿疹ができてよくならない患者さんは、柿渋入りの歯磨きを使っていました。

柿は、ツツジ目カキノキ科に属し、近縁のものにキーウィ、ブラジルナッツ、ブルーベリーなどがあります。
キーウィとブラジルナッツは検査項目にありますが、柿抗原に対するRAST値は検査できません。

 いろんなペットにアレルギーのある患者さんは、馬油などは使わない方がよいかもしれません。
 モモなどを食べて起きる口腔アレルギー症候群
OAS)もまた、そんな植物入りのセッケンやシャンプーが原因として疑われています。
 桃の葉エキスのようなものが入っているために、モモをたべてOASが起きている可能性があります。
 食物アレルギーのところにも説明されています。


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