1.アトピー性皮膚炎における発疹の左右差について


遠藤薫他:アトピー性皮膚炎における発疹の左右差について。第47回日本アレルギー学会総会、1997。
遠藤薫他:ニンジンアレルギーを示した右利きで左に強い手湿疹の1例。学会・時期不明
遠藤薫他:右利きで左手に強い手湿疹の3例、学会・時期不明


仮定

1.アトピー性皮膚炎のかゆみには左右差はない。
2.患者は主として利き腕で掻破する。
仮説
3.発疹は利き腕で掻破する側が悪化する。
4.掻破によって発疹が生じる。
という仮定と仮説を設定し、それを検証した。


対象患者

1997年5月〜8月に大阪府立羽曳野病院皮膚科を受診したアトピー性皮膚炎患者144名(男56名、女88名、3〜45歳、平均年齢19.6歳)

   全身重症度(グローバル評価)  
    1    2    3    4    5   全体
 患者数   4    48    60    26    6名    144名 

 ボール投げ  字を書く   男    女    全体 
 右  右   51    84    135 
 右  左   1    0    1 
 左  左   4    4    8名 


方法

1. 患者の右利き、左利きの分からない状態で、下記の部位別に左右そ れぞれについて、発疹レベルを記載し、同時に左右差を比較した。

調査部位:肘窩、手首、前腕、膝窩、膝前部、頬部、頸部、及び全身
各部位の皮疹:皮疹レベルを012345、掻破痕を0123


2. 患者の右利き、左利きの分類は、
    (1).ボールを投げるのは、右か左か両方か、
    (2).字を書くのは、右か左か両方か、 で行った。

3. 血清IgE値、好酸球数を測定した。

結果

1.患者全体では、頸部を除いて、統計的に有意な左右差はなかった。
2.軽症患者は、中等症以上の患者と比して、肘窩、膝窩、頸部 において、有意に掻破部位の皮疹が悪かった。
3.血清IgE値と好酸球数は、いずれも低値の患者において、有意に掻破部位の皮疹が悪かった。


かんがえ

1.軽症のアトピー性皮膚炎においては、肘窩・膝窩・頸部などの 発疹は掻破によって生じている可能性がある。
2.中等症以上の患者では、発疹は掻破以外の要因が関与している 可能性がある。



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