抗生物質による接触じんま疹型の薬疹の一例 |
遠藤薫他:抗生物質による接触蕁麻疹の一例。第295回日本皮膚科学会大阪地方会、1989。
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要旨
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接触じんま疹は、抗原が皮膚から浸入して起こるじんま疹の一つである。
Maibach らは、そのメカニズムにより3種類に分類し、さらに臨床像から4種の臨床ステージに分類している。
接触じんま疹のメカニズムによる分類
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Type A
(非免疫的) |
ヒスタミンと接触
他のメディエーターによるヒスタミンの直接的遊離 |
Type B
(免疫的) |
即時型過敏反応
寒冷・温熱に接触して起きるもの |
Type C
(不明) |
チオ硫酸アンモニウム他
他者に血清で移行しないもの |
接触じんま疹の臨床ステージによる分類
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ステージ1 |
接触した領域に限局した膨疹と紅斑 |
ステージ2 |
全身のじんま疹症状、血管浮腫を伴うもの |
ステージ3 |
気管支喘息を伴った全身のじんま疹 |
ステージ4 |
アナフィラキシーショックを伴った全身のじんま疹症状 |
今回、我々は、Type B、ステージ4に分類されるアナフィラキシーショックを呈した抗生物質による接触じんま疹を経験したので、報告する。
症例:47歳、看護婦。
現病歴:以前よりずっと手湿疹がある。
昭和63年8月、抗生剤溶解液が手について、じんま疹が出現した。
この時胸部不快感、咳嗽、眼瞼腫脹もみられた。
その後、何度か同じ症状を繰り返していた。
そのころより気管支喘息の症状が現れ、不定期にアゼプチンを内服していた。
平成元年1月、ハロスポアの点滴溶解液が手にかかり、全身に紅斑が出現し、呼吸困難、血圧低下などショック症状に陥った。
入院後の経過:びらんを伴った手湿疹があるが、休職中のためハンドクリーム程度で改善していた。
%FVC 95.1%と正常、FEV1.0% 69.4%と低下し、閉塞性肺症状を示していた。
IgE 872 Iu/ml、薬剤によるリンパ球刺激試験で、ハロスポアのS.I. 2.59、ペントシリンのS.I.は2.65と高値であった。
前腕屈側にろ紙を置き、抗生剤皮内反応液をたらすSemiclosed patch testを施行し、ハロスポア、ケイペラゾンが15分後陽性であった。
Semiclosed patch testで偽陽性以下の薬剤について、さらに皮内反応液を用いて scratch testを施行したところ、セフメタゾンとベストコール、スルペラゾン、セファビッド、ペントシリンで陽性を示した。
scratch testで陰性であった薬剤について、さらに皮内反応液で皮内テストを施行したところ、シオマリンでのみ陽性結果が得られた。
いずれの抗生物質とも側鎖にN-メチルテトラゾールチオメチル基を有していた。
びらん亀裂を伴った手湿疹は、外来抗原に対して経皮感作を起こしやすい状態をつくると考えられる。 |
薬剤によるリンパ球刺激試験 |
ハロスポア |
1836 cpm |
S.I 2.59 |
ペントシリン |
1877 cpm |
S.I. 2.65 |
コントロール |
708 cpm |
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皮膚検査のまとめ |
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patch test |
scratch test |
皮内テスト |
ハロスポア・パンスポリン |
++ |
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ケイペラゾン |
+ |
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セフメタゾン |
± |
++ |
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ベストコール |
- |
++ |
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スルペラゾン |
- |
+ |
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セファビッド |
- |
+ |
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ペントシリン |
- |
+ |
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シオマリン |
- |
- |
+ |
セファメジン |
- |
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タケスリン |
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エポセリン |
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モダシン |
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セパトレン |
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ビクシリン |
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モナペン |
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リラシリン |
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ドイル |
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チェナム |
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アザクタム |
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ゲンタシン |
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ミノマイシン |
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ホスミシン |
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(注)空欄は検査を施行せず |
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(後記) ハロスポア・パンスポリンは先発メーカーの依頼で後発品メーカー大洋薬品が製造している。
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