(2).じんま疹じんましん


 じんま疹と湿疹はどんなふうに違うかといえば、次の表のとおりです。

 じんま疹と湿疹の比較
 じんま疹
 かゆみのある赤み、みずぶくれ(膨疹ぼうしん)で、ひっかいたり、こすれると悪化します。
 
圧迫部やこすれるところによくできます。
 しばしば数時間以内にあとかたもなく
消えます(中には1日以上続くものもあります)。

 肥満細胞より放出された
ヒスタミンなどが原因となっています。
 しばしばIgEが関与していますが、IgGその他の抗体が関係していることもあります。

 疲れたり、睡眠不足になったり、ストレスがひどいとき、悪化します。
 生理前から生理中に悪くなり、頭痛・生理痛などで
痛み止めをのむと悪くなります。
 暖まったり、
運動や汗をかいたりすると悪化します。

 治療するなら、抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の
内服です。
 炎症反応を伴わず、自然に消えるときは
ステロイド外用剤は使わない方がよいでしょう。

 湿疹
 皮膚が赤くなり、硬くなったり、
ざらざらしたり、かさかさして、落屑を伴っています。
 時間単位で
消えることはありません
 しばしばかゆみがあり、ひっかくと悪化します。
 白血球が関与する
炎症反応です。
 もし治療するなら、ステロイド外用剤などの抗炎症剤です。



 じんま疹は、T型アレルギーが皮膚で起きたときに相当します。
 気管支喘息やアレルギー性鼻炎など他のT型アレルギーを併せて持っていることもあります。
 IgE抗体が抗原に結合して起きているといわれていますが、IgE抗体値が正常域にあることがあります。
 ソバによるじんま疹のように、RAST値さえも正常域のものもあります。

 アトピー性皮膚炎は、湿疹型のW型アレルギーとじんま疹型のT型アレルギー両方の要素を含んでいます。

 じんま疹は、時間経過で急性じんま疹慢性じんま疹(急性じんま疹が2週間以上続いているもの、以前から繰り返して起きているじんま疹)に分けられます。
 慢性じんま疹は、さらにいろんなタイプに分類されます。

@急性じんま疹

 急性じんま疹は、
★全身の多型紅斑様・麻疹様の炎症の伴ったものと、
★慢性じんま疹が何らかの理由で急に悪化(急性増悪)したもの
 に分けられます。

 前者のタイプの急性じんま疹は、紅斑が強く、かゆみが強いとは限りません。
 このタイプの急性じんま疹は、全身に急速に広がり、ひどいときは、しばしば発熱や全身倦怠感などを伴います。
 原因としては、いろんな感染症、薬剤、卵・牛乳などの食物、アニサキスなど様々です。
 特に、細菌感染症が原因になっているとき、抗生剤を内服すると細菌が死滅し、死滅した細菌から大量の菌体内毒素が放出され、この毒素がひどい急性じんま疹症状を引き起こします。
 原因細菌は溶連菌が最も多いようですが、肺炎球菌、腸内細菌、黄色ブドウ球菌、食中毒菌、マイコプラズマなどもじんま疹の原因細菌になります。
 従って、判断は難しいですが、急性じんま疹に対して、抗生剤が治療に役立つことがあります

 急性じんま疹の発疹は、普通のじんま疹のように時間単位で消えるということも少なく、抗アレルギー剤の効果が少ないこともしばしばです。
 多くは、原因が自然になくなるまで待つか、できるかぎり大人しく安静にしておくことも必要です。
 あまりにもひどければステロイドの全身投与になりますが、原因が感染症の場合は、かえって自分の免疫を低下させるために、慢性化する一因になります。

 急性じんま疹が慢性じんま疹の急性増悪の場合、原因としては、
★内服していた抗アレルギー剤がなくなったとき、
★じんま疹の原因物質(感染微生物、食物・吸入アレルゲン、薬剤・化学物質など)が増加したとき、
★疲れや睡眠不足、精神的ストレスなどで免疫が低下し、もともとのアレルギー状態を抑えきれなくなって、悪化したとき、
 などが考えられます。
 いずれにせよ、このタイプの急性じんま疹の治療は、慢性じんま疹と同じです。


上肢の膨疹(急性じんま疹)です。
発疹の中央から色が薄くなります。

A慢性じんま疹

 慢性じんま疹でできる膨疹(
ぼうしん)は、たいていはかゆみを伴います。
 周辺に少しずつ広がるとともに、最初できたところからよくなるためにラグーンのように中心部からよくなります。
 多くは数時間以内に消失します。


 じんま疹は、
肥満細胞mast cellから漏れ出たヒスタミンなどが原因で生じます。
 肥満細胞内のヒスタミンが細胞外に放出されてなくなると(枯渇
こかつ)、蕁麻疹症状はできません。
 肥満細胞でヒスタミンがつくられるまで時間がかかるために、前日できた部位の肥満細胞にはヒスタミンがなくなっており、次の日には同じところにはできないこともあります。

 じんま疹症状は、睡眠不足・肉体的な疲れ・ストレスなどの免疫低下で悪化します。
 飲酒や運動や汗をかいたりすると、悪化します。
 ステロイドを内服すると、正常免疫まで抑制してしまうために、かえって治りにくくなります。
 ステロイド内服は、感染症に対して免疫が低下するために、感染症が原因になっているじんま疹が難治化する原因になります。
 特に、ステロイドを内服すると、IgGやIgA抗体が低下し、アレルギー反応を抑える遮断抗体などができにくくなります。
 実際、IgG抗体の低い慢性じんま疹は、抗アレルギー剤を減らすことが難しく、困った存在です。

 
 
仮性アレルゲン

 
抗原抗体反応を介さずにアレルギー反応を起こす物質を仮性アレルゲンと言います。
 アスピリンなどの解熱鎮痛剤が代表的ですが、サリチル酸誘導体を含むジャガイモ、キュウリなどの野菜、果物、タートラジン(黄色4号)、安息香酸ナトリウム(防腐剤)などの食品添加物でも同様な反応を起こすことがあります。
 治りにくい慢性じんま疹の患者にこれが原因になっていることがあります。


 じんま疹は、痛み止めや解熱剤などの非ステロイド系抗炎症剤を内服しているとたいていは悪化します。
 それに構造的に作用的に近い物質として、サリチル酸誘導体が、下記の表のようにいろんなところにあります。
 これらをすべて避けることは困難ですが、多少少なくするとじんま疹症状によい結果が得られることがあります。

 
じんま疹の原因となる
サリチル酸誘導体を含むもの


 
1.
野菜・・・キュウリ、トマト、トウガラシ     
2.穀類・・・
ジャガイモ(特に芽のところ)    
3.果物・・・リンゴ、イチゴ、桃、サクランボ、アンズ、ブドウ、オレンジ
4.着色料・・・食用色素黄色4号(
タートラジン)、食用色素黄色5号(サンセットイエロー)
5.防腐剤・・・安息香酸ナトリウム(しょうゆなど)
6.局麻剤・・・ベンゾカイン、プロカイン、ベンジルアルコール
7.薬剤・・・
アスピリン
*パラフェニレンジアミン(PPDA)などの酸化染毛料、パラアミノ安息香酸PABA(紫外線吸収剤)も交差反応することがあり、要注意です。

 

 ヒスタミンは皮膚にあるヒスタミンのH1受容体(recepter)に結合し、紅斑や膨疹(
ぼうしんができます。
 ヒスタミンがヒスタミン受容体に結合するのを拮抗
(きっこう)的に阻害するのが、抗ヒスタミン剤です。
 抗アレルギー剤はこの抗ヒスタミン作用に加えて、肥満細胞の細胞膜の安定化することでヒスタミンの放出を抑える作用もあるといわれています。

 抗ヒスタミン剤は、普通抗コリン作用も併せて持っていることが多く、副作用として眼圧が上がったり、尿が出にくくなったり(前立腺肥大の悪化)、口が渇いたり、便秘になったりします。

 また、ヒスタミンは脳の中では神経伝達物質として働いています。
 そのために抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤は、血液脳関門(Blood brain barrier BBB)を通過して脳の中に入ると、副作用で眠気や集中力の低下が生じます。 

 なお、ヒスタミン以外の物質がじんま疹型の発疹を作っていることがあります。
 この場合は抗アレルギー剤が効かず、ステロイドや免疫抑制剤などの内服しか効果がないことがあります。

 じんま疹の中には、発疹が1日以上続くものがあります。
 このときは炎症を伴うことが多く、血管炎がみられることもあります。
 炎症が伴うものについては、ステロイドの外用剤やときにステロイドの内服を仕方なく用いることがあります。
 なお、
じんま疹様血管炎は自己免疫疾患の一種になります。

B物理性じんま疹

 
物理性じんま疹の一つ、機械性じんま疹は外からこすれたり、当たったりするだけで、みみずばれになるタイプのじんましんです。
 必ずしもかゆみが伴っているとは限りません。
 この現象は一般の慢性じんま疹でも見られることが多く、こすった部分が盛り上がる現象を皮膚描記症
(びょうきしょう)と呼ばれます。
 機械性じんま疹は、肥満細胞に抗体が結合したために膜が弱くなり、少しの刺激で壊れてヒスタミンが放出されるために起こっています。
 IgE抗体に抗原がブリッジして抗原抗体反応が生じ、肥満細胞が破壊されてヒスタミンが放出されるというような経過になっていません。
 そのためか、抗アレルギー剤が効きにくい傾向があります。

C寒冷じんま疹

 寒冷じんま疹も物理性じんま疹の一種です。
 秋から初冬に変わる頃、急に寒くなり、少し風邪気味などいくらか体調の悪いとき、冷たい雨に打たれたりしたとき、そんな冷えたところに現れます。

 ある一定の温度差、又はある温度以下にならないと起こらないことも多いようです。
 ずっと続くときは、夏季に冷たいプールに入ってショックを起こす例もあります。

 治療は、抗アレルギー剤の予防内服になりますが、完全に止めるほどの効果がありません。
 むしろ全身が冷えたりしないように注意し、早く風邪症状を治すことかもしれません。


寒冷じんま疹です。
冷水を入れたコップを当てて誘発していたものです。
冷水の温度を5℃、10℃、15℃、20℃などと変えたものを同時に前腕に当てて検査します。

D温熱じんま疹

 
温熱じんま疹は、お風呂に入ったりして体が暖まると現れる物理性じんま疹です。
 普通の慢性じんま疹にも見られる現象です。

E日光じんま疹

 
日光じんま疹は、紫外線や可視光線に当たって起きるじんま疹です。(学会報告)
 急に日差しが強くなった3月ころから症状が現れます。

 いつも日光に当たっている顔面や手背は少なく、むしろ普段日光を浴びていない前腕の方がよく出ます。
 5月の連休の時、もぐら人種が急に半袖になって紫外線をたくさん浴びると現れることがあります。

 というものの、たいていはそのまま当たっているうちに出なくなります。

 じんま疹を起こす紫外線には、波長が長いUVAとそれより短いUVBがあります。
 UVAの方が頻度は多いようです。
 別の波長の光線をあらかじめ浴びておくと、それを当たってもじんま疹がでないことがあり、抑制波長と呼ばれています。
 また、同じところに紫外線を当て続けると、次第にじんま疹が出なくなります。

 治療としては、抗アレルギー剤は効果はなく、むしろ少しずつ日光を浴びて、紫外線に慣らしていくのがよいといわれます。



日光じんま疹(露光部位の膨疹)です。
七分袖のせいで、前腕中央に境目が見られます。

 いずれのタイプのじんま疹も、
薬剤が原因になっていることもありますので、要注意です。

Fコリン性じんま疹

 運動や入浴したとき、汗のかき始めにチクチクピリピリした感じのじんま疹ができることがあります。
 皮膚症状としては、細かい紅斑がたくさんできますが、普通の膨疹のように広がりません。
 このタイプのじんま疹は、
コリン性じんま疹といって、アトピー性皮膚炎患者に多くみられます。

 原因の一つとして、汗孔が詰まっているためとか、汗のアレルギーで起こるといわれています。
 それだけに、しばしば汗が余り出ていない患者さんや、全く汗が出ていない患者さんがいます。

 
アセチルコリンという神経伝達物質が関与しているともいわれています。

 このタイプのじんま疹は、よくならないままずっと続くと、湿疹にしばしば変わります。
 しばしば汗の少ないアトピー性皮膚炎患者さんみられます

 治療としては、汗の通りをよくするために、運動して汗をかくことをすすめています。
 とくに、寒いときから少しずつ汗をかくのがよく、急に大量に汗をかくようなことをしてはいけません。
 抗アレルギー剤はあまりきかないようですが、他に適当な薬剤がありません。

 卵白RAST値が高値の乳児が卵を食べてできる発疹は、普通じんま疹反応です。
 
食物アレルギーによるじんま疹は、最初口腔粘膜から抗原が吸収されて、口の周りに紅斑ができ、さらに広がると、目の周りや顔面全体に発疹ができます。
 のどの粘膜から抗原が吸収されると、咳や、ひどければ呼吸困難が生じます。
 胃腸からタンパク質のまま吸収されると、胃腸粘膜にアレルギー反応が起きて、腹痛、嘔気や
嘔吐、下痢症状が現れます。

 
 アナフィラキシーアナフィラキシーショックについて

 「アレルゲンの侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起(
じゃっき)され、生命に危機を与える過敏反応」をアナフィラキシーと定義されます。
 「アナフィラキシーに
血圧低下意識障害を伴う場合」をアナフィラキシーショックといいます。

 アナフィラキシーは次の3項目のうちいずれか1つあれば、アナフィラキシー診断されます。

@皮膚粘膜症状に加えて、A.呼吸器症状(咳・鼻水や呼吸困難など)、B.循環器症状(動悸・血圧低下など)のいずれか一つ。
Aアレルゲン暴露後、A.皮膚粘膜症状、B.呼吸器症状、C.循環器症状、D.持続する消化器症状(腹痛・嘔気・嘔吐・下痢など)のうち、2つ以上。
Bアレルゲン暴露後、急速な血圧低下(生後11カ月以下で<70mmHg、1〜11歳で<70mmHg+(2×年齢)、11歳以上で<90mmHg)

ただし、喘息発作、失神・神経性ショック、不安・パニック発作、誤嚥、心筋梗塞、肺塞栓、けいれん・てんかん、全身性肥満細胞症など鑑別の難しい他の疾患を除外する必要があります。

 アナフィラキシーの多くは、IgE抗体が関与します(食物、ハチ(ホスホリパーゼAなどの酵素類)、薬剤、ラテックス(ゴム手)など)。
 時に、IgE抗体が関与しないものもあります(薬剤、造影剤、生物学的製剤など)。

 しばしば、風邪などの急性感染症、運動、低温・高温、日光、精神的・肉体的ストレス、月経前状態、飲酒、解熱鎮痛剤などの薬剤などが、アナフィラキシーの誘因・悪化要因となります。

 アナフィラキシー症状がでるまでの時間は、多くはアレルゲン暴露した直後が多いようですが、ときに数時間過ぎてから現れる場合(
遅発型反応)があります。
 しばしば、アナフィラキシーの進行の速さや重症度は予測できないことも多く、数分で死に至ることもあります。
 一度よくなって時間を置いてもう一度アナフィラキシーが現れることもあります(二相性反応)。

以下部位ごとに症状(主にじんま疹反応、T型アレルギー反応)をまとめますと、

皮膚粘膜:発赤腫脹、かゆみ、浮腫、眼瞼腫脹・浮腫、結膜充血・流涙
呼吸器:鼻水・くしゃみ・鼻閉・鼻のかゆみ、のどのかゆみ・息苦しさ・声が出にくい・しゃがれ声(嗄声(させい)、ヒューヒューという呼吸音・咳・息切れ・呼吸数増加、チアノーゼ(紫色の冷たい皮膚)、呼吸停止
循環器:胸痛・頻脈、動悸・不整脈、血圧低下、失神・失禁・顔面蒼白、心停止
消化器:腹痛・嘔気(吐き気)・嘔吐、下痢、飲み込みにくい
神経系:恐怖感・不安・不穏状態、眠気・めまい・頭痛・見えにくい

(治療) アナフィラキシーショックが起きそうな感じがあれば、
 急に立ち上がったりせずに、
 頭を低くして横になること(嘔吐している時は顔を横向きにすること)、
 下腿に何かはさんで下肢を高くすること。

 町中であれば、すぐに救急車を呼ぶこと。

 
エピペン(アドレナリン)を大腿部中央前外側に筋注、またはボスミン(成人0.3mg、子供0.15mg)を皮下注すること(10分程度で最高濃度、40分で半減)。

 酸素投与(高流量6-8L/分)。
 静脈ルート確保し、バイタルサイン測定。
 皮膚のじんま疹に対しては抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤の内服または点滴。
 喘鳴・咳嗽・息切れにはβ2アドレナリン刺激薬の吸入または内服。

 ステロイドの点滴または内服については効果不明とされているが、遅発型反応には有効といわれる。

(対策) まず原因・悪化要因を見つけて、除くこと。
 経口減感作療法が有効であり、アレルギー専門の病院で卵・牛乳その他に対して行われているが、うまくいかないことも多い。
 近くに医療施設がない林業で働く人については、エピペンを持ち歩くのがよいと考えられます。

 抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤を症状のないときも内服して、IgE抗体の結合する受容体を薬剤で被覆しておくと、予防になる可能性
がありますが、あまり症状が強いタイプには効果がないかもしれません。


 
慢性じんま疹病因を考えるとき、アトピー性皮膚炎のそれと重なる部分が多々あります。

 他のところで述べていますように、ヒトの体の中に入ってきた
異物からヒトを守るメカニズムを免疫といい、その免疫がそのヒトにとって不利益な現象を起こしたとき、それをアレルギーと呼んでいます。
 生じたアレルギー反応が、頭の中なら熱性けいれんやインフルエンザ脳症のようなものがあり、腸管の中で起これば嘔吐
おうとや下痢となります。

 そして、そんな異物の代表が、
細菌ウイルスであり、風邪をひいて全身にじんましんができたというようなパターンが多くみられます。

 ヒトの体には、実に様々な細菌やウイルスが同居しています。
 それらがアレルギー反応の元凶になっているときは、年余にわたって続く慢性じんま疹となるかもしれません。

 体内にいつも同居している細菌、カビやウイルスなどとしては、
扁桃肥大のある患者についている溶血性連鎖球菌(溶連菌)、
虫歯・歯槽膿漏、
胃潰瘍(ピロリ菌)や憩室症、
いろんな腸内細菌や
食中毒菌
カンジダ・マラセチア・トリコフィトンなどの体内や体表の真菌、
水痘/帯状疱疹ウイルス・単純ヘルペス・EBウイルス・サイトメガロウイルス・HHV-6・HHV-7などのヘルペス属ウイルス、
トキソプラズマ
回虫や蟯虫などの寄生虫・幼虫移行症(クリーピングディジーズ)
などが考えられます。

 慢性じんま疹の場合、ふつう人の体、つまり免疫は、アレルギー的問題点をなんとか抑えようとがんばっています。

 体内に問題点があり、そんなじんま疹症状を抑えるメカニズムががんばっているとき、そのメカニズムをおかしくすると、当然のことながら悪化します。

 そんなことを引き起こすものの代表は、いわゆる精神的・肉体的
ストレスです。
 どのアレルギー疾患も、受験期や仕事が忙しいとき、睡眠不足が続くと悪化します。
 朝起きてじんま疹症状がなくなっていても、夕方、疲れがたまった頃にもう一度現れるといったことが多いようです。

 一方、たとえばダニや卵などの異物を細菌やウイルスと間違えたとき、すなわち、
抗原認識に異常が生じると、ダニや卵に対してアレルギーを起こす抗体が作られ、じんま疹が起きることになります。
 結局は、アレルギーは免疫を調整制御するメカニズムの異常ということになります。

 卵アレルギーなどの食物アレルギーで現れる発疹は、たいていはじんま疹型の発疹です。
 上記の食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)や口腔アレルギー症候群OAS)もまた食物が原因となったじんま疹の一種です。

 魚介類でじんま疹が起きることがありますが、それに含まれる寄生虫の一つアニサキスが原因になっていることもあります。(論文報告)

 以上、全く同じことをアトピー性皮膚炎でも述べています。
 つまり、アトピー性皮膚炎のなかで、W型アレルギーの要素がなくなったものがじんま疹かもしれません。

 
治療を考えるとき、症状の強いじんま疹は、動き回ったり、疲れたりすると悪化することが多く、安静・休息が重要です。
 体育やクラブ活動は休み、ひどければ、仕事や学校を休んで体を休めた方がよいでしょう。

 抗アレルギー剤で十分なことも多いのですが、仕方なくステロイドの点滴や内服が必要なこともあります。
 しかし、急性じんま疹で感染症が原因になっているときは、ステロイドは原因菌を増やし、患者の抵抗力を低下させるために、難治化(なおりにくいこと)の要因にもなります。
 抗生剤の内服がよく効くこともあります。
 逆に、抗生剤を内服して死んだ細菌から漏れ出た大量の毒素で、ひどい発疹ができることがあります。
 梅毒の治療でも似たようなことが起きることがあります。

 慢性じんま疹の治療は、まず原因悪化要因を除くことです。
 体内に常在している感染病巣が原因と考えられるとき、抗生剤でそれを除くのは不可能です。
 となると、肉体的な疲れや精神的ストレスをためないようにして、自信の免疫力を低下させないようにするのが肝要です。
 抑えきれないところを、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服で補うことになります。
 内服してじんま疹症状がなくなっても、いきなり内服を中止しても、薬剤の効果が切れた頃に再発するだけです。
 少しずつ内服量や回数を減らしていく、
漸減療法がよいでしょう。
 減らし方としては、たとえば、アレロックなら、毎日2錠内服していたものを、発疹がなくなれば、1錠に減らして寝る前に内服します。
 それで何日か様子を見て、再発がなければ、○○×○○×○○×のように3日に1日飲まない日を作るか、○×○×○×の1日おきにします。
 もし減らして症状が悪化すれば、症状のでない量に戻して経過を見て下さい。
 それで症状の再燃がなければ、さらに○××○××○××と減量し、問題なければ、さらに○×××○×××○×××とさらに減らして下さい。
 ここまで減らして症状が悪化しなければ、じんま疹が出たときにのみ内服するような飲み方でよいでしょう。
 同じ調子で内服していて、突然悪化したときは、冷静に、客観的に悪化要因を考えて下さい。
 原因や悪化要因が分からなければ、血液検査をするか、じんま疹日記をつけて下さい。(慢性じんま疹の血液検査の一例を、典型的な検査所見として示しています)

 いずれにせよ、急性じんま疹と、慢性じんま疹の急性増悪を、ちゃんと区別するのは重要です。

 慢性じんま疹に対しても、同じように、原因治療になっていないステロイドの内服は望ましくないと説明しています。
 ステロイドを内服し始めると、ステロイドしか効かなくなります。
 止めるとステロイドを内服する前よりひどい状態になり、ステロイドを内服しているとだんだん効果が低下してきます。
 というものの、自己免疫性慢性じんま疹のときは、ステロイドを内服するしかないこともあります。



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