5. アトピー性皮膚炎の診断
     (アトピー性皮膚炎でよくみられる症状)

前半はこちら

目次

(1).アトピー肌
(2).白色皮膚描記(
びょうき)
(3).毛孔性苔癬
(たいせん)
(4).肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)
(5).はたけ(小児乾燥性湿疹)

(6).足底皮膚炎(ズック皮膚炎)
(7).おむつ皮膚炎
(8).耳切れ、耳周囲の湿疹
(9).脱毛、抜毛症、逆立つ毛、くせ毛
(10).円形脱毛症

(11).ヘルトゲ徴候
(12).デニー・モルガンひだ
(13).パンダ徴候
(14).チョビヒゲ徴候
(15).ダーティネック、アミロイド

(16).稗粒種(
ひりゅうしゅ)
(17).ステロイド皮膚炎(酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎)
(18).手湿疹、足底湿疹
(19).口唇炎
(20).便秘

(21).リンパ節腫脹(
しゅちょう)
(22).自律神経失調症
 *自律神経系(副交感神経・交感神経)の応答について

 ここには、アトピー性皮膚炎によくみられる部分症状とするには多少異論のあるものも記載されています。

 アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質で最も多い症状といえば、恐らく
ドライスキンでしょう。
 持って生まれたそんな乾燥肌が、外からの刺激に弱い状態・抗原(アレルゲン)が体内に入りやすい状態をつくっています。

 「アトピー性皮膚炎はアレルギーか」と、疑問を投げかける研究者もいます。
 IgEアレルギーは、単に合併しているだけではないか、という意見もあります。

 それでも必ず見られる症状をもう一つ上げろといわれると、引っ掻かずにはいられない感覚、すなわち
かゆみということになります。
 かゆみがなければ、アトピー性皮膚炎とはいえません。

 そして、必ず見られる症状をもう一つとなれば、しばしば
好酸球の浸潤を伴った皮膚の炎症、すなわちかゆみのある湿疹です。

 蕁麻疹はヒスタミンなどのメディエーターが関与し、しばしば時間単位であとかたもなく消えてしまいます。
 湿疹は白血球が関与する炎症であるために、1日やそこらで自然に消えることはありません。

 これらが微妙に重なり合って、年齢・性、精神的な影響や性格要因も加わって、部位ごとに異なった症状を呈することになります。

(1).アトピー肌 atopic skin

 
体幹などの刺激されやすいところに、乾燥した肌に加えて、毛穴を中心に小さな白いぶつぶつ(角化)が、多数見られます。
 まるで、おろし金のようにも見えます。


大腿伸側にみられたAtopc skinです(12歳女)。

 乾燥肌は、風邪などの感染症が続いていると、ひどくなります。

 
衣類などの刺激に弱く、多少かゆみがあるかもしれませんが、その人の生まれつき持ち合わせている肌です。
 ずっとつき合っていくしかないところがあります。

 ひどいときは、尿素軟膏(ウレパールクリーム・ローション、ケラチナミン軟膏、パスタロンソフトなど)がよいようです。
 保湿剤のヒルロイドソフト・ローション、ビーソフテンローション・スプレーなどもいいところがあります。

 ドライスキンについては、「外用剤に頼るのではなく、少しずつ自分の肌になれることも必要」
、と説明しています。
 つまり、ドライスキンがあるからといって、自分でない異物の保湿剤をべたべたと塗るのは決して好ましいことではない。
 その部分にドライスキンがあるためにかゆみがあり、そのために湿疹ができるというので゛あれば、保湿するのは仕方がない。
 しかし、単に乾燥しているからといって、まるで化粧品のように保湿剤を使うのは止めた方がよい。


(2)白色皮膚描記(びょうき) white dermography

 
アトピー性皮膚炎患者の皮膚を軽くこすると、白い筋がつきます。
 特にかゆみなどの症状はありません。 


引っ掻いたところに一致して白い筋がついています (白色皮膚描記症)。


(3).毛孔性苔癬
(たいせん)

 
思春期ころより、上腕の伸側、肩、臀部、大腿などに、毛穴に一致したおろし金のような丘疹が多発することがあります。
 女性や肥満した人に多く、かゆみはありません。

 常染色体優性遺伝で、父母のどちらかに同じものがあります。
 小児期・思春期から症状が始まり、成人期になると徐々によくなります。

 アトピー性皮膚炎やアレルギー体質の患者さんに、しばしばみられます。

 ごしごしこするのは悪くするだけです。
 つけるとすれば、尿素軟膏・ローションですが、活性型ビタミンD軟膏も有効です。

 男性では、耳前やなどに褐色の同じような発疹ができることがあります(顔面毛包性紅斑黒皮症)。


上腕外側の毛孔性苔癬です。毛孔に一致して多数の角化した丘疹がみられます。
かゆみはなく、ひっかき傷も見当たりません。



15歳男の子の毛孔性苔癬です。
毛孔に一致して発疹ができています。

(4).肥厚性瘢痕ひこうせいはんこん

 様々な皮膚の炎症(たとえばやけど、にきび)、外傷後、手術後に、真皮内でコラーゲン・結合組織が過剰に増えて、皮膚が盛り上がった状態です。
 遺伝的素因があります。

 かゆみや、押すと痛み(圧痛)があります。

 皮膚がひっぱられて伸びるところ(肘の外側や膝の前、肩、胸の中央など)によくできます。

 できたものを切り取ると、できた傷跡からさらに大きな瘢痕ができることがあります。

 治療は、強めのステロイド外用剤や貼り薬(ドレニゾンテープなど)がよく用いられますが、即効性がなく、効果が少ないこともよくあります。

 やむなく、ステロイドの局所注射を施行するドクターもいます。
 ステロイドの全身投与は、それの副作用をつくる場合があります。
 周囲にステロイドでニキビや毛包炎ができると、それがまた肥厚性瘢痕になります。

 抗アレルギー剤のリザベンの内服が、肥厚性瘢痕やケロイドの治療としてもちいられます。
 副作用として、出血性膀胱炎には要注意です。


肥厚性瘢痕に対して、ステロイドの局注することでできた症状です。
注射部位が肥厚、隆起しています。
それらの間はステロイドで皮膚が萎縮し、色素脱失もみられます。


 肥厚性瘢痕の患者さんも、実際アレルギー体質を持っている場合が多いようです。

 重症のアトピー性皮膚炎の湿疹は、慢性化すると堅くなったり、盛り上がったり、局面となって苔癬化する場合があります。
 この苔癬化局面は、ひっかくことでできた肥厚性瘢痕のような状態が、湿疹に加わっていると考えられます。

 湿疹が堅く盛り上がっていても、赤み(炎症)が少ないとかゆみが少ないことがあります。
 これにステロイドを一生懸命つけても無意味かもしれません。

 痒疹型のアトピー性皮膚炎もまた、肥厚性瘢痕に近い要因が重なっていることがあります。

(5).はたけ(小児乾燥性湿疹)


 
夏の日焼けしたとき、乾燥した肌の中に白くなって色が付かない局面が現れることがあります。
 過去または現在の湿疹のために、皮膚の色を黒くするメラノサイトの数が減っている状態です。

 このタイプの湿疹は、たいていはかゆみはありません。
 もしかゆみがあるときは、あたたまったときなどに現れるじんま疹です。

 冬季、風邪などの感染症が続いていると、乾燥局面はひどくなります。
 いろんな感染症が原因で起きているアレルギーの一つと考えられます。

 体幹・四肢は伸側のこすれるところにできます。
 下向きに寝ると、頬がこすれて、ひどくなります。

 植物エキスの入ったセッケンで、ごしごし洗いすぎると悪化します。
 つけるなら、アレルギー用の乳液か化粧水です。
 何もしないで、自分の汗と皮脂で保湿するのも、よい作戦です。
 
 かゆみのない湿疹にステロイド外用剤をつけるのは論外です。


顔面の軽い落屑を伴った脱色素局面(はたけ)です。

(6).足底皮膚炎(ズック皮膚炎)

 冬に小児の足底の前の方に、乾燥した湿疹ができることがあります。
 ゴム靴の刺激によるもので、靴下をはかせるといくらかよくなります。

 はきものにぶつぶつと突起がある健康サンダルのようなものでできやすいようです。

 このタイプのサンダルは不健康サンダルと呼ばれ、足のアレルギー性接触皮膚炎や刺激性接触皮膚炎の原因となります。
 いぼいぼの間にはカビもたまりやすく、足白癬が悪化する一因にもなります。

 サンダルの上面内側に突起物があると、それがこすれて足背にも発疹ができます。

 近年、クロックスやそれのまがいものによる接触皮膚炎が増えています。
 このタイプのはきものを裸足ではくのは危険です。

(7).おむつ皮膚炎

 乳児のおむつ部に一致して湿疹がよくできます。
 多くは、尿や下痢便などでぬれたおむつの刺激が原因です。
 おむつの素材が原因の場合もあります。
 おむつの種類やメーカーを変更するとよくなることがあります。

 薬剤入りの刺激の強いおしりふきを使いすぎていることで起きていることがあります。
 市販のおしりふきは、外出したときだけにしましょう。
 自宅では、ぬるま湯と柔らかいガーゼでやさしく拭き取るようにしたいものです。
 もちろん、感冒などで、便の回数が多いことも関係しているかもしれません。 

 単なる刺激が原因のときは、非ステロイド系のトパルジック軟膏やアズノール軟膏程度の外用で皮膚炎は改善します。
 それでよくならなければ、弱いステロイド外用剤をもちいるのはやむ得ないかも知れません。

 おむつに問題がなければ、おむつの下は掻きにくいために、アトピー性皮膚炎の湿疹は少ないのが普通です。

 下痢などが続いているとき、肛囲を中心にカンジダが増えているときがあります(乳児寄生菌性紅斑)。
 辺縁部の皮膚がめくれたような状態、辺縁に離れて膿疱のような丘疹がみられるときは、カンジダが怪しいかもしれません。

 抗真菌剤の外用でよくなりますが、おむつ皮膚炎も同じところにあるために、弱いステロイド外用剤を併用するしかないかもしれません。
 なお、カンジダにステロイドを外用剤すると、一時的によくなりますが、その後悪化します。
 保湿剤でも同じことが起こることがあります。


おむつ皮膚炎です。
パンパースによるもので、変更してよくなりました。
サイズにも問題があったかもしれません。
便の回数が多かったこと、おしりふきでごしごしやりすぎたことの影響の混在しています。


(8).耳切れ、耳周囲の湿疹

 汗のかきやすいところはかゆくなりやすく、乳幼児期には、特に耳の周囲はかゆみのために引っ掻いて亀裂が生じます。

 耳下にできやすく、ひどければ耳前、耳後、耳上にもできます。

 髪の毛の影響も無視できません。
 男の子はとくに、あまり髪の毛は長すぎない方がよいでしょう。

 二次感染して、とびひになることがあります。
 耳前の湿疹はとくにひっかいてひどくなります。

 耳介のはさまれたところや外耳道にも湿疹ができます。

 青少年や成人は耳かきなどの習慣が止められず、それの刺激でどうしてもよくならないケースがあります。
 いつも指を突っ込んでいる患者さんがいます。
 キズがついて黄色ブドウ球菌が増えていますが、耐性菌のMRSAも少なくありません。

 また、これらの部位にはしばしばアスペルギルスやカンジダなどのカビがつくことがあります。
 外耳道は閉鎖空間であるために、一度湿疹ができると治りにくいようです。


耳切れの亀裂が瘢痕になっています。


一部二次感染を伴い、びらん・痂皮のみられる耳周囲の発疹です。
耳の下の方に耳切れがありますが、耳介の内側にも湿疹ができています。
耳前部はひっかいてつくられたものです。


(9).脱毛、抜毛症、逆立つ毛、くせ毛

 
頭部の湿疹は、掻破の影響もあって、多かれ少なかれ脱毛を伴います。

 全身の湿疹についても同じことが当てはまります。
 アトピー性皮膚炎患者の体毛は、かゆみでひっかいて抜けていることもあり、あまり濃くないのが普通です。

 免疫系の異常は、多くの場合、毛根やその周辺にも及び、脱毛症を伴っています。
 たとえば、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病でもしばしば脱毛症が見られます。
 梅毒や結核などの慢性の感染症でも毛は抜けやすくなっています。
 慢性の溶連菌性の扁桃炎のような病巣感染でも、毛は抜けやすいようです。
 抗がん剤の中にも脱毛の副作用があります。
 ごく普通の抗生剤を使っても毛が抜ける場合があります。

 ということは、アトピー性皮膚炎はいろんな要因が重なって脱毛症が起きやすいということです。

 精神的な要因から、自分で髪の毛を抜く場合があります。
 
抜毛症(トリコチロマニア)と呼ばれ、不規則な脱毛局面が生じます。


ひっかいてできた脱毛部もありますが、精神的不安のために、自分で毛を抜いています(抜毛症)。

 生まれたばかりの乳児はたいてい上手に指を使えません。
 かゆみで引っ掻きたくても、手指をうまくつかえないために、手足や顔面をシーツや母親の衣服にこすりつけて引っ掻きます。
 頭がかゆいときは、頭を左右に振って、後頭部をシーツにこすりつけて引っ掻きます。
 結果として、乳児のアトピー性皮膚炎では、後頭部に脱毛局面がみられます。


生後4カ月乳児の脱毛局面です。

 乳児では頭に湿疹があると、しばしば髪の毛が逆立ちます。

 普通、頭がかゆいとひっかくと、静電気が発生します。
 その静電気がダニやほこりなどいろんなものを吸着して、アレルギーが起きます。
 髪の毛が立つのは、そんな静電気に引っ張られて、毛が逆立っているところもあります。

 アトピー性皮膚炎患者さんは、髪の毛の断面が楕円形になっているために、くせ毛になりやすい傾向があります。


頭に軽い湿疹があると、髪の毛が逆立ちます。
ドライスキンをひっかいてできた静電気がつくっています。


(10).円形脱毛症

 
アトピー性皮膚炎は、頭部に円形脱毛症を伴うことも多いようです。

 アトピー性脱毛とも呼ばれ、精神的要因、アレルギー的要因、あるいは何らかの自己免疫異常が重なって生じたものと思われます。


30歳男性の後頭部上方の円形脱毛症です。
辺縁部の毛を軽く引っ張るといくらか簡単に抜けますので、多少拡大傾向にあります。
かゆみなどの症状はありません。


 円形脱毛症の病因としては、以前より、

1.毛母に対する自己抗体ができていたり、細胞性免疫の異常、
2.ストレスなどによって毛周期停止遺伝子が発現したため、毛周期に障害が発症、
3.下垂体や甲状腺などの内分泌異常により、休止期が延長したため、
4.自律神経系の異常、
5.様々な内科的要因による栄養障害や代謝障害によるもの、

などが指摘されています。

 毛周期
 成長期(anagen) ⇒ 退行期(catagen) ⇒ 休止期(telogen)

 円形脱毛症も一個、二個くらいならよしとして、繰り返して多発する場合があります。
 頭の毛が全部抜けることもあります(全頭脱毛症)。
 全身の毛が全部抜ける場合もあります(全脱毛症)。

 たいていは知らないうちにできて、散髪のとき気がつくことが多いようです。
 秋から冬にかけて抜けやすく、まるで草木が芽吹くように、春先から夏場にかけてしばしば毛が生えてきます。
 多くは自然に治ります。
 のんびり構えて生えてくるのを待つのがよいのです。

 というものの、自然によくならないときは、しばしば難治性のものです。

 精神的な負担にならない程度で、脱毛の原因を探ってみるのもよいかもしれません。
 お金がかかって、役に立たないといわれればそうかもしれませんが、血液検査は病因検討の材料・治療の参考になります。

 一般的な治療としては、

・局所の免疫を抑えるものとしてのステロイド外用剤(内的な問題が局所の外用剤でよくなるかといえば笑止ものです。私はあまり処方していませんが)、

・いろんな発毛外用剤(フロジン液、ミノキシジル/リアップ(市販の発毛剤)、カンフル、ユベラ軟膏、ヒルドイド/ビーソフテンなど)、

・紫外線療法(PUVA(乾癬でよく行われています)、直線偏光近赤外線照射療法)、

・日光浴(できれば帽子などで隠さない方がよいのですが)、

・針灸

などがあります。

 即効性がなく、必ず効果があるとは限りませんが、

・抗アレルギー剤、グリチロン、セファランチン、
・漢方(柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遙散、半夏厚朴湯など)、
・ビタミンD、B2、B6、C、L-システイン(ハイチオール)、パントテン酸、
・ステロイド内服、
・精神安定剤

などの内服もあります。

 広がっても、ステロイドの内服や局注だけは絶対に手を出さない方が無難です。
 ステロイドはの全身投与は、薬剤が効いている時だけ変な風に毛が生えてきますが、ステロイドの効果が切れるとかえって広がります。

 確かに、全身の毛が抜けて苦労している患者さんがたくさんいます。

 そんな患者さんは、最終手段として、
・ステロイドの全身投与や局注、
・免疫抑制剤、
・局所免疫療法(squaric acid dibutylester SADBE)で接触皮膚炎を起こす)、
・刺激療法(液体窒素・ドライアイスによる凍結療法など)
を試みるしかないかもしれません。
 もちろん、必ずしもよい結果が得られるとは限りません。

(11).ヘルトゲ徴候

 顔がかゆいために、頻回に顔をひっかいた結果、眉毛の外側の3分の1が抜けたり、薄くなる状態を言います。

 ひどくなれば、眉毛は全部抜けてしまいます。


顔面の苔癬化局面と眉毛の脱落が見られます。
前書きに記載しました大阪大学医学部付属病院で最初に遭遇した超重症の患者さんです。
ずっとステロイドを内服していますし、失明もしています。


(12).デニー・モルガンひだ

 下眼瞼のひだで、目をこすることが原因と言われています。


(13).パンダ徴候(他でも触れています)

 目の回りが色黒になった状態を言います。

 アレルギー性結膜炎などがあると、しばしば見られます。

 眼の周囲に湿疹ができる原因があれば、それを除かないと、どんどんひどくなります。
   眼周囲に用いる化粧品、
   無添加・天然ものとうたわれている植物入りのシャンプーやリンス、
   ゴーグル
   ペット・ほこり・花粉などの空気中に飛んでいるもの、
   ペットや毛染めつき髪の毛などを触った手で眼を触っても、
 眼の周りに湿疹ができます。

 かゆみで眼や眼周囲をひっかいているうちに湿疹になり、少しずつ慢性化して、色素沈着が加わったと考えられます。
 とにかくこすらないことが重要です。

 日本人は日焼けのあとが黒くなりやすく、眼囲だけに湿疹ができると、そこが黒くなったということです。

 逆に、目の回りに湿疹がない逆パンダ徴候は、日光アレルギーの存在を疑わせます。
 特に、眼鏡で防護しているとき、しばしばみられます。


(14).チョビヒゲ徴候

 鼻唇部の湿疹です。

 アレルギー性鼻炎のために鼻汁が出ることで、または、始終鼻をかむために生じます。
 冬季、感冒のために鼻水が続いているときにもできます。 

 パンダ徴候やチョビヒゲ徴候に対して、ステロイド外用剤だけで対処してもよい結果は得られません。

 まず鼻炎や結膜炎に対応すべきです。

 鼻炎にはマスクなど、結膜炎には花粉症メガネを使い、抗アレルギー剤の内服やステロイドの入っていないアレルギー用点眼剤から治療は始めるべきです。

 安易に顔、とくに眼や眼周囲にステロイド外用剤は使わない方が賢明です。
 よくならなければ、仕方なくステロイド外用剤かプロトピック軟膏ということになりますが、あくまで最終兵器です。
 外用剤による接触皮膚炎にも要注意です。

(15).ダーティネック、アミロイド

 頸部は汗の影響を受け、襟などの刺激に常にさらされていることから、湿疹ができやすく、直りにくいと思われます。
 湿疹は長く続くとしばしば色素沈着(色が黒くなること)を伴います。

 頸部の色素沈着は特徴的で、さざ波様のすじがつき、ダーティネックと呼ばれています。
 
 ナイロンタオルを常用してごしごしこすっていると次第に黒くなってくる皮膚炎、ナイロンタオル皮膚炎摩擦皮膚炎・摩擦黒皮症)と似た症状です。

 皮膚が多少薄くなっているところもあり、ステロイド外用の影響も考えられます。

 思い切りこすったり、引っ掻いているうちに、表皮下、真皮上層にアミロイドが沈着することがあります。
 前腕伸側や下腿全面に褐色の小さな丘疹が密集して又は散在してできます。
 非常に強いかゆみがあります。
 アミロイド苔癬と呼ばれるものです。


アトピー性皮膚炎でみられる前腕のアミロイドの沈着です。
ひっかいてつくられるのは、ひっかき傷方向や列序性に並んでいることからも明らかです(ケブネル現象)。


(16).稗粒種(ひりゅうしゅ)

 眼周囲
などにみられる常色の小丘疹です。
 かゆみも痛みもありません。

 湿疹ややけどの
炎症のために、破壊された汗管や毛包が嚢腫(
のうしゅ)様に増殖したものです。
 湿疹がよくなってから出現することもあります。

 滅菌した針の先で内容物を出すのがよいのですが、眼に近いと危険です。
 出しても、再発することも多いようです。


小学生のアトピー性皮膚炎のある患者さんにみられた稗粒種です。

(17).ステロイド皮膚炎(酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎)

 
ステロイド外用剤の副作用です。
 アルコール中毒のように、ステロイドに依存的な状態です。
 
 ステロイド外用剤を長期にわたってに塗っていると、次第に血管が拡張し、顔が赤くなり、ニキビによく似た発疹が現れることがあります。

 強いステロイドほど、長く使っているほど、起こりやすいようです。
 どの程度・どのくらいとは言えないところがあります。
 多くは、化粧品などの接触皮膚炎に対して、問題の化粧品をそのまま使いながら、下地がわりにステロイド外用剤を使っているような患者さんで起こっています。

 ここでステロイドを塗るのを急に止めると、顔がお化けのように腫れあがったり、滲出液が顔全体から出るような状態になります。

 ステロイドを再開すると、多少症状は治まりますが、結局ステロイド外用剤を止められない状況は続くことになります。

 顔面にステロイドを何も考えないで塗り続けるのは好ましくありません。
 成人型のアトピー性皮膚炎の赤ら顔は、このステロイド皮膚炎の状態のことがあります。

 治療としては、アトピー性皮膚炎でなければ、ステロイドを中止すれば、何ヶ月か後には元に戻ります。
 もともとアトピー性皮膚炎を合併していると、そんなに簡単にはいきません。
 少しずつステロイド外用剤のレベルを下げていく方法もありますが、必ずしもうまくいくとは限りません。

 プロトピック軟膏に変更するのも一つの方法ですが、難しいところです。

 この副作用を避けるために、顔面の湿疹に対しては、ステロイドを使わないか、もしくはプロトピック軟膏ということになりますが、どうしてもプロトピック軟膏を使えない患者さんがいます。

 すでにステロイド皮膚炎になっていると、プロトピック軟膏に変更するということは、ステロイドを中止するのと同じです。
 つまり、ステロイド皮膚炎の状態になると、簡単にプロトピック軟膏に変更できないということです。

 いずれにせよ、顔面の湿疹は原因除去につきます。


ステロイド皮膚炎・酒さ様皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎の湿疹とにきびと毛細血管拡張がみられます。


(18).手湿疹、足底湿疹

 手湿疹は、ドライスキンの手にいろんな外的刺激またはアレルギーが原因となって起こります。

 外的刺激が原因の時、昔からよくいわれる、いわゆる皮膚が弱いという状態です。

 刺激が原因のときの症状は、主婦の場合、普通利き手の右に強く、触って起きているときは手のひら側の指に現れます。
 症状が強くなると、指全体に拡大し、手のひらにまで広がります。
 洗剤の液の中で何かしていると、ぬかみその中に手を突っ込むと、皮膚の角層が薄い指の背側に症状が強くなり、手背にもできてきます。

 清潔主義で常に消毒・セッケンを使って洗っていると、それだけで手に湿疹ができます。
 このときはほぼ対称性です。

 刺激による湿疹のときは、かゆみは、それほど強くありません。
 かゆみが強くなってきたときは、何らかの接触したもの(外用剤を含めて)によるアレルギーが加わったと考える必要があります。

 指の背部に湿疹が続くと、皮膚が古くなったゴムのように硬くなります。
 そうなると、皮膚は伸びにくいために、曲げると割れて、亀裂
(きれつ)ができ、結構痛くなります。

 手の湿疹にゴムの手袋を直接はめると、しばしばラテックスや塩ビや可塑剤フタル酸エステルのアレルギーが生じ、手背などにかゆみを伴った接触皮膚炎がプラスされます。


ゴム手袋でできた手指背部のびらんのある手湿疹です。
この患者さんは手背と手首にも湿疹があります。
水仕事をするときは、腕の上の方まで長くした綿手袋を下ばきにして、上に長いゴム手袋やビニール手袋をはめるように説明しています。

 子供の場合、加わる刺激としては、

・手の洗いすぎ、セッケンの使いすぎなどが多く(大人でもありますが)、
・遊びの中で触っているもの、
・たとえば、砂場の砂、粘土、バットやグローブ、鉄棒、ボール、テニスラケット、自転車のサドル(大人では自動車のハンドル)などです。

 そこに、アレルギーの要因が加わることがあります。

・草むしりして生じる草の接触皮膚炎、
・グローブの皮革に含まれる金属クロムなどによる接触皮膚炎、
・粘土の防腐剤の接触皮膚炎

などです。


少年野球をしている子供の左手に見られた湿疹です。
グローブによるもので、手背や手指背部に湿疹がひどくなります。

 大人の手のアレルギー性の湿疹としては、

・草花(サクラソウ、キク、球根類、アネモネ・ラナンキュラスなど)、
・犬猫などのペット類、ゴム手袋、
・薬剤(農薬、肥料など)、
・安物の指輪の金属、ハンドクリーム・ステロイド外用剤

などが原因になります。
(学会報告 右利きで左手に強い手湿疹の3例)

 女性の手湿疹で手背に強いタイプは、しばしばいろんな外用剤で接触皮膚炎を起こしている可能性があります。

 成人男性が手に湿疹ができたときは、とにかく仕事か趣味で触っているものを考えるべきです。

 両手にほぼ対称性に同じように湿疹ができたときは、原因は外的なものではなく、内的なものも考えるべきです。
 最も多いものは、扁桃炎などの病巣感染ですが、歯科金属などアレルギー、自己免疫的要因なども考えられます。
 しばしば上下対称、すなわち手足とも同じような湿疹ができることがあります。

 特に、足底の水疱を伴ったようなかゆみのある湿疹は、掌蹠膿疱症に近いものかもしれません。
 とにかく感染症後にできやすい傾向があります。


感染症後の足底のかゆみのある湿疹。手掌にも同じような湿疹があります。
検鏡しましたが、白癬菌は認められませんでした。


 治療としては、刺激が原因のときは、二重の手袋をするなど、まずその刺激を減らす工夫をすることです。
 アレルギーが原因のときはそれを除くことです。

 洗いすぎているとき、消毒液を使いすぎているときは、まずその生活習慣を止めることです。
 というものの、簡単に止められない患者さんがたくさんいます。

 刺激が原因の時は、ワセリンやハンドクリームで保湿するのもよいかもしれません。

 それでよくならなければ、ステロイド外用剤です。
 が、原因・悪化要因を除かないまま強いものを使っていると、どんどん皮膚が薄くなり、ますます治りにくくなります。

 亀裂のところにステロイドのテープ剤が用いられます。
 あまり長くつけたままにしておくのは、よくありません。
 テープが刺激になり、白く浸軟してかえってよくありません。

 慢性のアレルギー疾患全般に言えることですが、もし原因がはっきりせず、あるいは除くことができなければ、ひどくならない程度の弱い治療で経過を見るべきです。
 早い話、主婦や水仕事が止められないのであれば、ワセリンを併用しながら、VW--1程度の外用剤で我慢です。 

 尿素タイプ(尿素が10%入りと20%入りの二種類があります)は好き嫌い、合う合わないのある保湿剤です。
 亀裂が少なければよいのですが、どうしても刺激感があり、ステロイドを使いすぎて角層の薄くなっている患者は合わないようです。
 尿素軟膏は、手背に症状が少ない刺激性の皮膚炎向きです。
 角層が分厚くなっている足底には向いています。

 保湿剤として、ワセリンがべとべとして嫌いで、他にないということで、ヒルドイドソフト・ローションがよく使われています。
 保険を使えば3割負担で市販のものよりは安いようですが、ハンドクリームとしては高価で、接触皮膚炎には用心が必要です。

 手湿疹がステロイド外用剤でよくならないとき/かえってひどくなるときは、カンジダや土壌真菌などの真菌(カビ)が手に繁殖していると考える歩べきです。

 特に、手の一部に説明できない湿疹部位があるとき、接触皮膚炎とはとても考えられない孤立した発疹部位があるときは、恐らくカビが合併しています。

 手にカビが付くと厄介です。
 手は水仕事などの刺激が多く、露出しているために、簡単に引っ掻いたり触ったりします。

 また、手湿疹の上にカビがのっている時は、特に厄介です。
 なぜなら、ステロイド外用剤は湿疹はよくなりますが、正常免疫を低下させるために、カビは増えます。
 そではと、抗真菌剤だけを外用すると、カビは減りますが、湿疹はむしろ悪化します。

 ということで、最初弱めのステロイド外用剤と抗真菌剤の両方を同じところにに外用し、湿疹が軽くなれば、抗真菌剤だけにするのがよいでしょう。
 しかし、カビがアレルギーの原因になり湿疹をつくっている時は、難物です。

 また、抗真菌剤がもっぱら足白癬用に開発されただけに、必ずしも土壌カビに効果があるとは限りません。
 効かなければ、系列の異なる抗真菌剤を試すか、抗真菌剤の内服しかない場合もあります。

(19).口唇炎、口角炎

 口唇炎は口唇にできた炎症すなわち湿疹です。

 口唇の湿疹も、手湿疹と同じように刺激性アレルギー性に分けられます。

 刺激が原因のものとしては、乳幼児ならば、ヨダレ、食物と調味料(塩分やしょうゆなど)、なめる習慣、おしゃぶり、歯磨きなどです。

 なめる習慣があると、口唇の周囲に沿って円形・環状に湿疹ができることがあります。

 小学生以降になると、下口唇に症状が強ければ紫外線や歯磨きのしすぎが考えられます。

 アレルギーが原因の場合、子供ならば食物アレルギーが考えられます。
 ただこのときは、口唇だけでなく、口周囲・顔面・眼周囲のかゆみや紅斑など、他の症状が加わります。

 全年齢通じては、リップクリームや口紅、歯磨き粉の接触皮膚炎が考えられます。
 歯磨き粉の種類によるときもありますが、歯磨きのしすぎによる刺激性皮膚炎も結構たくさんみられます。
 1日3回以上、何か食べるたびに大量の界面活性剤でごしごしやっていれば、手はともかく、口唇もがさがさになって当然というところです。

 
口唇につけたものが紫外線を吸収して湿疹を作っている場合もあります。
 このときは、紫外線吸収剤の入ったリップクリームが多いのですが、それ以外のものもあるかもしれません。
 歯科金属や歯列矯正の金属で、肉芽腫性に口唇炎ができることがあります。

 単純ヘルペスのアレルギーで口唇に湿疹ができることがあり、抗ウイルス剤の内服を併用すると、よい結果が得られる場合があります(クインケ浮腫)。

 下口唇の湿疹が紫外線のアレルギーのとき、成人の場合、内服している薬剤が紫外線を吸収して湿疹を作っていることがあります。

 口唇炎が慢性化すると、口唇に黒色点や色素沈着が生じることがあります。

 口唇炎があると口唇の弾力性が失われ、しばしば口角に亀裂が生じます(口角炎)。
 しばしば、亀裂に二次感染を伴い、痛みも現れます。
 このときは、抗生剤の外用剤を使うことがあります。

 なお、高齢者、抗がん剤をのんでいる患者、糖尿病患者などは、口腔内カンジダ症があれば、カンジダ性の口唇炎や口角炎ができることがあります。


舌で口周囲をなめるために悪化しています。
もともと単純ヘルペスを繰り返し、それのアレルギーによる口唇周囲の湿疹です。
ゾビラックスの内服をしながら、ひどいところにRPP−1を少しつけました。
普段はプロペトで経過を見ています。
学校での人間関係や家族関係によるストレスは外来ではどうすることもできませんでした。


口唇の乾燥が強く、口角炎もあります。
それまで使っていたリップクリームを中止し、プロペトに変更して軽減しました。



口周囲の色素沈着が強く、口唇には黒色点がみられます。
全身に湿疹が広がっている成人型のアトピー性皮膚炎の患者さんです。
顔面はプロトピック軟膏を主体にしていますが、ステロイド外用剤も併用せざるを得ないようです。
ポイツ・ジェガース症候群のような消化管のポリポージスを伴った疾患ではありません。

(20).便秘


 アトピー性皮膚炎患者さんは、健常人より便秘が多く見られます。
 中には、一週間くらい全く便通がない患者さんもいます。


 湿疹があるために
、全身の皮膚から水分が失われていること、
 腸管の運動が悪いこと、
 腸管の粘膜にも皮膚の湿疹と同じような炎症が起きていること、
 正常な
腸内細菌が減少/死滅し、大腸菌やカンジダなどが増えているため、

などが、アトピー性皮膚炎患者さんの便秘の原因と考えられます。

 実際、内視鏡で直腸や大腸をのぞくと、
腸管粘膜に炎症を起こしているために真っ赤になっている患者が多数います。

 さらに、食物によるアレルギー反応や
抗生物質の影響と考えられる場合があります。
 下痢のこともあります。
 乳幼児期・小児期の抗生剤の
使いすぎで、健全な腸内細菌が育っていないとも考えられます。

 腸管の透過性が亢進し、消化が不十分であるために、アレルゲン
(主にタンパク質)がそのまま吸収され、食物アレルギーによる蕁麻疹や湿疹が起きやすくなります。

 自律神経の働きがよくないために、腸管の動きがよくないのも便秘の原因になっています。

 セロトニン(5-HT)と便秘

 セロトニンは5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)と呼ばれるモノアミン(MA)の一つです。
 5-HTは体内で必須アミノ酸トリプトファンから合成されます。

 5-HTは、90%は腸のクロム親和性細胞にあり、8%が血小板に、2%が脳内に存在します。

 脳内では神経伝達物質として働き、シナプス間隙に放出されて、精神状態の安定に関与しています。
 その5-HTの再取り込みを阻害することで5-HTの働きを強くしたものが、いわやもSSRIという抗うつ薬です。

 ちなみに、5-HTはBBB(脳血液関門)を通過しませんので、トリプトファンとして摂取し、脳縫線核で合成する以外にありません。
 そんなトリプトファンのBBB通過は女性で悪く、他のアミノ酸が存在すると影響されると言われます。

 腸の5-HTは、腸の蠕動運動を促す作用があります。
 そのために、5-HTが多いと下痢に、少ないと便秘になります。
 ストレスと過敏性大腸の関係の一因といったところでしょうか。
 

(21).リンパ節腫脹

 頸部(くび)、鼠径部(太股の付け根)、脇の下などに、ほとんど痛みのないしこりがいくつも見られることがあります。

 アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚の感染症が多いために、そんなふうに慢性にリンパ節が腫れています。
 リンパ節は、風疹などのウィルス感染、溶連菌感染症などの細菌感染を起こしたときにも痛みを伴って腫れます。

 一方で、リンパ節に炎症を起こしているウイルスや細菌が、アレルギーの悪化要因になっていることがあります。

 EBウイルスなどのヘルペス属ウイルスも要注意です。


(22).自律神経失調症

 採血のとき、血圧が低下して気を失う若い男性がいます。
 神経性ショックのひとつで、針を見ただけで倒れる若者もいます。
 神経性ショックは、アナフィラキシーショックよりはるかに多く経験します。

 こんなエピソードの他に、風呂場などで急に立ち上がったときふわーとする起立性低血圧、その他車酔い、赤面症などいろんな症状があります。

 自律神経は、交感神経副交感神経に分かれます。

 交感神経は血圧を高くしたり、気道を開いたりする働きがあります。
 喘息発作のときに使われる薬剤は、交感神経を刺激して働かせるクスリです。

 アレルギー患者はこの交感神経が十分働いていないために、緊張して逆に血圧が低下したり、気管支が狭くなると考えられます。

 緊張していると、交感神経が働いているためにかゆみが少ないようです。

 夜間は、主として副交感神経が働いているために、喘息発作が起こりやすく、かゆみが強くなる傾向があります。

 湿疹がひどくなると、昼間汗が出ないのに、夜間大量に寝汗をかくことがあります。
 これは、一種の自律神経失調症と考えられます。
 対策として、昼間十分運動して、汗をかくようにすすめています。

 ストレスの影響で、下痢になったり、便秘になったりする過敏性大腸も、自律神経失調症の所見の一つと考えられます。

 自律神経系の応答   
 効果器   副交感神経系 
応答
 交感神経系 
 受容体  応答
 眼      
 散瞳筋    α1  収縮(散瞳)
 縮瞳筋  収縮(縮瞳)    
 毛様体筋  近くを見るために収縮    
 心臓      
 洞房結節  心拍数減少  β1  心拍数増加
 心房・心室  収縮力減少  β1、β2  収縮力増加
 房室結節とプルニエ線維  伝導速度減少  β1、β2  伝導速度増加
 細動脈      
 冠状血管   −  α1、α2  収縮
   β2  拡張
 皮膚と粘膜  −  α1、α2  収縮
 骨格筋   −  α1  収縮
   β2、M  拡張
 腹部内臓    α1  収縮
 唾液腺  拡張  α1、α2  収縮
 腎臓  −  α1  収縮
 体循環静脈   −  α1、α2  収縮
   β2  拡張
 肺      
 気管支筋  収縮  β2  弛緩
 胃      
 運動と緊張  増加  α1、α2、β2  減少
 括約筋  弛緩  α1  
 分泌  刺激  ?  抑制
 腸      
 運動と緊張  増加  α1、α2、β1、β2  減少
 括約筋  弛緩  α1  収縮
 分泌  刺激  ?  抑制
 胆嚢  収縮  β2  弛緩
 膀胱      
 排尿筋  収縮  β2  弛緩
 括約筋  弛緩  α1  収縮
 子宮   不定  α1  収縮(妊娠時)
   β2  弛緩
 男性性器  勃起  α1  射精
 皮膚      
 立毛筋  −  α1  収縮
 汗腺   −  α1  軽度で局所的な分泌
   M  全身性の多量分泌
 肝臓  −  α1、β2  グリコーゲン分解
 膵臓      
 外分泌腺  分泌増加  α  分泌減少
 内分泌腺    α2  分泌抑制
 唾液腺   多量漿液性の分泌  α1  濃厚で粘調な分泌
   β  アミラーゼ分泌
 涙腺  分泌    
 脂肪組織  −  α1、β3  脂肪分解
(ギャノング生理学23版による)




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