(3)クインケ浮腫(急性限局性皮膚浮腫、血管神経性浮腫)



 発作性、突発性に生じる浮腫(浮腫は血管・リンパ管の外に水が漏れ出た状態です)です。
 しばしば、普通のじんま疹を合併します。
 あるいは、クインケ浮腫はじんま疹(T型アレルギー)の特殊な病態とも考えられます。
 また、原因などの違いにより、いくつかの病態に分類されます。

(分類)

@遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema(HAE))
 日本補体学会よりガイドラインがあります。
 5万人に1人程度にこの疾患があるといわれます。
 HAEは補体成分C1インヒビター(C1-INH)の欠損によるものです。

 3種の病型に分けられます。
(1). T型(HAEの85%)
 常染色体優性遺伝、C1-INHタンパク量低値、C1-INH活性低値。
(2). U型(HAEの15%)
 常染色体優性遺伝、C1-INHタンパク量正常又は上昇、C1-INH活性低値。
(3). V型(稀、ほとんど女性)
 エストロゲン依存性、ときに凝固第XU因子の変異、C1-INHタンパク量正常、C1-INH活性正常。

*家族歴のない孤発例がHAEの25%に認められます。
*HAEの診断
 家族歴がある。
 発症は10〜20歳代に多い。
 かゆみのない皮下浮腫、粘膜下浮腫、消化器症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢)、喉頭浮腫・声帯浮腫(3歳以下は稀、窒息感・嚥下困難・声が出ない状態、適切に治療されないと致死率30%)、精神的・肉体的ストレス・妊娠・生理・薬物で誘発
 発作は通常24時間でピークとなり、72時間でおさまるが、それ以上続くこともあります。
検査所見
 C1-INH活性低値、C4低値。
 家族歴のない時、後天性血管性浮腫との鑑別が必要。
 他に、アレルギー性血管性浮腫、薬剤性血管性浮腫があります。
発作時の治療
 入院して、C1-INH製剤静注(ベリナートP、50kg以下500単位、50kg以上1000-1500単位)、抗プラスミン剤(トラネキサム酸(トランサミン)、15mg/kg4時間毎、血栓注意)。
 喉頭浮腫がひどければ気管内挿管、気管切開。長期的予防として、トランサミン内服、ダナゾール(ボンゾール、もともと子宮内膜症・乳腺症の薬剤)

Aアレルギー性血管性浮腫(Allergic AE)
 外来ではHANEよりはるかに多い。
 ストレス・疲れ・風邪がきっかけになります。
 しばしば普通のじんま疹がみられます。
 多くは、口唇・口囲がタラコのように腫れたり(口唇浮腫)、眼瞼・眼周囲が眼が開かないくらい腫れます(眼瞼浮腫)。
 じんま疹があればかゆいこともあるが、かゆくないこともある(ときにピリピリ感)。
 消化器症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、筋性防御はない)、まれに呼吸困難(HANEほどひどくないが重篤なこともある)。

 原因として、単純ヘルペスのアレルギー、感染症のアレルギー(ウイルス・細菌)のアレルギー、アスピリン不耐症、食物アレルギー(ナッツ、エビ・カニ、卵など)。
 発作時の治療は、安静にして運動を避け、ストレス・疲れを除き、トランサミン内服、抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤内服します。
 単純ヘルペスのアレルギーが疑われるときは、抗単純ヘルペス剤(バルトレックス・ゾビラックス)の内服も良い結果が得られます。
 長期的な予防として、抗アレルギー剤の内服がよいようです。


単純ヘルペスのアレルギーが原因となったアレルギー性血管性浮腫と考えられます。
体幹にじんま疹がみられました。
トランサミン内服、バルトレックス、タリオン内服で呼吸困難もなく、翌日には軽減傾向がみられました。
その後タリオンを患者さん適当に(いい加減?)内服していますが、血管性浮腫の再発はみられません。


Bアンジオテンシン変換酵素(ACE)による血管性浮腫
 降圧剤(ACE阻害剤・ARB剤、ブラジキニンの分解を抑制するために、ブラジキニンが上昇)。上昇したブラジキニンが原因となります。

C好酸球増多を伴う好酸球性血管性浮腫(Gleich's syndrome、Non-episodic angioedema with eosinophilia(NENE))
 浮腫は主に顔・手背・足背などにできます。
 体にできることもあります。
 しばしば、発熱や関節痛を伴います。
 検査的には、血中の好酸球増加、IgM上昇がみられます。
 治療はステロイド内服又は自然軽快(4-8週)を待ちます。

D物理刺激による血管性浮腫
E後天性血管性浮腫(AAE)
F特発性血管性浮腫



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