@.光線過敏症 日光に当たるところ(露光部)に一致して発疹ができるとき、光線過敏症といいます。 露光部とは、額部、鼻翼とその両側、鼻唇部の口唇に近いところ、項部(うなじ)、首全面のVネック部、胸の上部のV部、手背などです。 顔面の光線過敏を起こしやすいところを示しています。 鼻を中心に蝶形に広がっています。 眼の回りは白く抜けます。 全身の光線過敏を起こしやすい部位を示しています。 項部(うなじ)、胸のVネック部、手背に注目して下さい。 発疹の種類は、紅斑、丘疹、結節、じんま疹、水疱、色素沈着などいろんなものがあります。 紫外線の当たったところに一致して紅斑ができる症例が多いようです。 慢性化してステロイド外用剤による治療が加わると、丘疹や結節などの発疹に変化することがあります。 かゆみのあるものと、ないものがあります。 影響を及ぼす光は主にエネルギー値の高い紫外線です。 目に見える可視光線や赤外線でも起きる場合があります。 紫外線(UV)は、主に日光から来るものですが、非常に過敏な患者さんでは室内の蛍光灯でも起きることがあります。 紫外線は波長が長いものから、UVA、UVB、UVCの3種類に分けられます。 波長の最も短いUVCは大気に吸収されて、地上まで届いていません。 UVBは主に日焼けを引き起こします。 皮膚の最も深いところまで侵入するUVAは、シミを起こすといわれています。 光線過敏症の原因として、 外から体内に入ったものが光線過敏症をつくっていもの(外因性)、 もともと患者の体質または体内にあるもの、体内でつくられたものが光線過敏症に関係しているもの(内因性) に分けられます。 外因性の光線過敏症はさらに、光(多くはUVA)を吸収して皮膚障害を起こす光毒性と、光感作物質が光(多くはUVA)を吸収して化学変化して抗原となり、光照射でアレルギー反応が起きる光アレルギー性に分けられます。 光毒性物質は薬剤が多く、ソラレン、テトラサイクリン、コールタール、サイアザイド系利尿剤、アントラセンなどです。 光毒性反応は、いわゆる日焼け様症状で、浮腫性紅斑があり、落屑や色素沈着を残します。 光アレルギーを起こす光感作物質もまた薬剤が多いのですが、下記のようにいろんなものがあります。 1. 薬剤 利尿剤、利尿剤入りの降圧剤(エカード、プレミネントなど)、抗生剤(ニューキノロン系、テトラサイクリン系など)、鎮静剤、非ステロイド系抗炎症剤、スタチン系抗コレステロール剤(メバロチン、リポバス、リピトールなど)、抗ヒスタミン剤(ニポラジン/ゼスラン、レスタミンなど)、アロフト、5FU、TS1、ダカルバジン、ビタミンB6、紫外線吸収剤など、 2. 天然物 キャベツ、イチジク、セロリ、ベルガモット油、香料、クロロフィルa分解産物(野沢菜、アワビ、クロレラ)。 内因性の光線過敏症としてはまず体質が上げられます。 冷え症や肩こりがあり、白血球が少ない女性は、抗核抗体が少し上昇していることがあり、しばしばちょっと日光を浴びただけで真っ赤になることがあります。 もともと高校生くらいまでは、紫外線対策もしないで校外で体育の授業をうけ、日焼けしていても日光に悪影響はうけていませんでした。 ところが、朝早く出勤し、夜遅く帰るようなもぐら生活をしていると、休日などにたまに紫外線を浴びるとひどいことになります。 紫外線は、日本人は当たりすぎない程度に慣れるのが一番よいのかもしれません。 日焼けで黒くなりやすいのも日本人に多いのですが、UV化粧品を使いはじめると、光線過敏のない人も、紫外線に影響されやすい状態になります。 内因性の光線過敏症としてよくみられるものに、日光じんま疹があります。 日光じんま疹は日光に当たっているうちに出なくなります。 いろんな自己免疫疾患、いわゆる膠原病には、しばしば光線過敏がみられます。 全身性エリテマトーデス(SLE)では鼻をはさんで蝶形紅斑がみられ、皮膚筋炎では顔面の目の上方にヘリオトロープ疹、手指関節背部にゴットロン徴候がみられます。 内科疾患でも、しばしば光線過敏症がみられます。 1.アルコール性肝障害など様々な肝障害の患者さんはしばしば光線過敏症がみられます。 できれば禁酒が望ましいのですが、臨床的にとても難しいところがあります。 患者さんにとって、酒も人生の一部といったところです。 2.皮膚晩発性ポルフィリン症は、長期にわたって大酒を飲んでいるアルコール性肝障害の患者さんやC型肝炎の患者さんに、ポルフィリンという物質が体内に増えて、これが光線過敏を引き起こす病気です。 日光が当たったところに小水疱、びらんができて、よくなると瘢痕になるというような経過を繰り返します。 3.ポルフィリン症には他に、先天性ポルフィリン症や骨髄性プロとポルフィリン症、急性間欠性ポルフィリン症などの遺伝する病気があります。 いずれも光線過敏症がみられます。 4.色素性乾皮症(XP)は、常染色体劣性遺伝で、A群からG群とVariantの全部で8群に分けられます。 いずれも紫外線を浴びた後に起こるDNA損傷を修復するメカニズムに異常があるために皮膚腫瘍が発生します。 5.種痘様水疱症はEBウイルスに関連した光線過敏症です。 6.慢性多形日光疹(PLE)は、日光に浴びてから発疹が出現する原因不明の病気の寄せ集めです。 これがさらに慢性化、重症化したものが慢性光線性皮膚炎です。 UVBやUVAのMEDが低下しており、弱い紫外線にも過敏性を示すことがあります。 7.ペラグラは、ビタミンB群のひとつ、ニコチン酸アミド(ナイアシン)の欠乏症が原因で起きます。 これにも光線過敏症がみられます。 ニコチン酸アミドは必須アミノ酸のトリプトファンから体内で生成されます。 ペラグラは過度のダイエットなどの不適当な食事、慢性アルコール中毒や胃腸の吸収よくない人、抗結核薬のINAH、抗がん剤の6-MPや5FU・TS1などでみられます。 下痢や口内炎、知覚異常・頭痛・意識障害などの神経症状もみられます。 治療として、光線過敏症の炎症に対しては、ステロイド外用剤やプロトピック軟膏が用いられますが、原因治療でないために長期的な効果は高くありません。 ステロイドの内服は短期的には症状を軽くするかもしれませんが、長い目で見てよい方法とはいえません。 結局、原因治療が大事で、薬剤が原因ならば、まずその薬剤を中止または変更する必要があります。 中止しても、脂肪組織などに長期にわたって薬剤が残ることが多く、薬剤の影響が何年も続くことがあります。 紫外線が原因ということで、いろんな形で遮光するのもよいでしょう。 光線過敏が強ければ、昼間に外出するのは困難で、ガラス越しの日光も避けた方がよいかもしれません。 目にはサングラスをかけた方がよいでしょう。 光線過敏症がそれほどひどくなければ、色物の長袖・長ズボン・手袋・帽子をつけて、顔面の露光部にはSPF50+とPA+++の紫外線カットの化粧品を使うしかないかもしれません。 日光じんま疹や体質的な問題のときは、冬場から上手に紫外線に慣らしていくのもよい方法です。 Copyright © 2003 Endou Allergy clinic All Rights Reserved |