アトピー性皮膚炎における下垂体・副腎皮質機能


学会報告で論文にできなかったもの
 
 

遠藤薫、青木敏之他(大阪府立羽曳野病院皮膚科):アトピー性皮膚炎における下垂体・副腎皮質機能
第41回日本アレルギー学会総会、1991
他に日本皮膚科学会、日本皮膚アレルギー学会でもデータ数が異なりますが、同じテーマで報告しています。
症例報告については、報告学会・時期がはっきりしませんが、
アトピー性皮膚炎と下垂体・副腎皮質機能について3例の症例報告も参考にして下さい。

要旨
 

対象と方法
1. 入院患者264名(男139名、女125名)(10歳未満の子供26名を含む)ついて、入院1カ月前のステロイド外用量によって、5群に分類した。
 なお入院中のステロイド外用量も毎日記録した。
2. 第1群は全く使っていない群、第2群は5g以下/月、第3群は5〜50g/月、第4群は50g以上/月、第5群は入院直前までステロイド内服していた群とした。
3. 対照として、性・年齢が一致したアトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患患者21名を選んだ。
4. 入院時のグローバル評価で微症、軽症、中等症、重症の4段階に評価した。
5. 入院翌朝と入院2週間後早朝に採血して、ACTHとコーチゾルを測定した。
6. 入院時コーチゾルが低下していた9名について、入院2週間後にRapid ACTH試験を施行した。

結果
1. 264名中106名(40.1%)で、コーチゾルが正常以下に低下していた。
2. 32.9%で、ACTHが低下していた。
3. 子供では低下の割合が多く、46.2%でコーチゾルが低下し、38.9%でACTHが低下していた。
4. コーチゾルとACTHの低下している患者の割合は、ステロイド外用量が多くなるにつれて増加していた。
5. ステロイド外用剤を全く使っていない第1群でも、コーチゾルで54.2%、ACTHで50.0%の患者が低下していた。
6. ACTHとコーチゾルともに低下している下垂体機能不全と考えられる患者は34.2%おり、ACTHが高値でコーチゾルが低値の副腎機能不全を疑う患者は1名いた。
7. 皮膚が重症の患者ほど、ACTHとコーチゾルの低い患者の割合が多くなっていた。
8. 入院後、第1群はコーチゾルが正常以下に低下していた19名のうち、入院2週間後18名は正常域以上に増加していた。
9. 入院後第3群は、大量のステロイド外用剤をつけた結果、コーチゾルが4名で正常以下に低下していたが、正常以下であった19名のうち18名は正常域になっていた。ACTHについても、低値であった11名のうち10名は正常域になっていた。1名は2週間後ACTHが高値から正常域以下になっていた。
10. Rapid ACTH試験を施行した9名はすべて正常であった。
11. ステロイド外用剤は明らかに下垂体系・副腎皮質系に影響を及ぼしていた。
 
はじめに

  昨今、しばしばマスコミなどで、アトピー性皮膚炎に対してステロイドを使用することを批判するニュースや文面が掲載されています。
  (注:1990年夏ころ?、ニュースステーションでステロイドを取り上げたことがあります)

 それを聞いて、患者がステロイドを中止し、急性増悪する例がかなり見られます。

 一方、ステロイド外用剤を大量に使用することでかえって難治化する例もしばしば認められます。

 副腎皮質ホルモンであるコーチゾルは、いわゆるストレスホルモンであり、様々なストレスが加わると上昇します。
 アトピー性皮膚炎についても、湿疹ができること自体ストレスであり、湿疹が悪化すると、何も治療していなければ、コーチゾルは高くなっています。

 コーチゾルの分泌は、健常人の場合、日内リズムがあり、早朝高くなり、夕方から夜間にかけては低くなっています。

 そのコーチゾルの分泌を促すのが、下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)です。
 ACTHにもコーチゾルと同じように日内リズムがあります。
 コーチゾルが大量に分泌される副腎腫瘍のような場合、ネガティブフィードバック阻害が脳下垂体に働いて、低い値になっています。

 コーチゾルを改良して、代謝を遅くして効果を高めたものが、いわゆるステロイドです。
 このステロイドを大量に、長期に使用すると、同じように脳下垂体にネガティブフィードバック阻害が起きてACTHの分泌が低下し、本来の副腎からのコーチゾルの分泌もまた低くなります。
 この様な状態が長く続きますと、下垂体前葉のACTH分泌細胞や副腎皮質が萎縮し、必要量のACTHやコーチゾルが分泌されなくなります。

 副腎萎縮や副腎機能低下を検査する方法の一つが、コートロシンを用いたRapid ACTH試験です。

 なお、ACTHの分泌は、視床下部から分泌されるCRHによって調節されています。
 このCRHの分泌を促すものの一つがストレスです。
 
 今回我々は、アトピー性皮膚炎の入院患者を対象にして、下垂体・副腎機能系の検査を行い、過去における長期のステロイド外用が、患者にどのような影響を及ぼしているか、検討しました。

 
方法

 
 対象患者は、1989年9月から1991年8月の間に、大阪府立羽曳野病院皮膚科に入院した264名(男139名、女125名)、平均年齢19.6歳(2歳〜52歳)です。

 アトピー性皮膚炎の診断は、Hanifin & Rajka の診断基準を用いて行いました。

 患者の問診、カルテ記録から、ステロイド外用量をチューブ剤として推測しました。
 すなわち、ステロイドを含む容器に入った外用剤の場合、希釈割合が分かっているときはもとのチューブ剤の量にもどして計算しました。
 他医の希釈割合が分からないときは、容器の量をそのまま計算しました。
 なお、ステロイドの強さは考慮しませんでした。

 患者が入院前の1カ月に使用していたステロイド外用剤の量によって、表1の様に5群に分類しました。
 第1群は、ステロイド外用剤を中止してから悪化した患者、すなわちリバウンド状態の患者と、最初から全くステロイド外用剤を使っていない患者の両方が含まれています。

 なお、対照として、同じ時期にアトピー性皮膚炎以外の皮膚科入院患者21名(男11名、女10名、平均年齢25.6歳)を加えました。

 なお、入院中の治療は、全例ステロイド外用剤を用いて行いました。

 入院翌日、24時間の蓄尿を行い17-OHCSを測定しましたが、蓄尿を正確に/真面目に行う患者が少ないために、結果の解釈はできませんでした。

 

表1 対象患者のステロイド使用量による分類
 
     男 女  計 
 第1群 全く使用していない   26 33   59名
 第2群  1カ月に5g以下を外用   35 47  82 
 第3群  1カ月に5〜50gを外用  65 40  105 
 第4群  1カ月に50g以上外用 
 第5群   直前までステロイドを内服  3 10 
  計   139  125  264名 
 対照 その他の皮膚疾患   11  10  21名 
 
 これらの入院患者に対して、入院翌日と入院2週間後の2回、早朝6:00に採血し、血中のコーチゾルとACTHを測定しました。
 コーチゾルとACTHは、EDTA加血漿とし、コーチゾルは試験管固相法を用いて、ACTHはビーズ固相法を用いて、RIA法で測定しました。
 なおコーチゾルの正常範囲は4〜16μg/dl、ACTHのそれは10〜30pg/mlです。

 また、ACTH値の結果報告は、10pg/ml未満については数値で示されず、そのまま10pg/ml未満と報告されています。
 そのために、平均値をとることができませんでした。

 Rapid ACTH試験は、コートロシン0.25mgを静注し、30分後、60分後の血中コーチゾルを測定しました。

 
結果

 
 患者の検査で得られたコーチゾル値の最大値は25.2μg/dl、最低値は0.0μg/dlでした。
 コーチゾル値が0.0μg/dlの患者は、ACTH値もまた10pg/ml未満でした。

 ACTH値の最大値は130pg/ml、最低値は10pg/ml未満でした。

 入院時のコーチゾルを表2にまとめました。

 

 
表2 入院時のコーチゾルのまとめ 
    
   コーチゾル(μg/dl)
 群 <2  2〜4   4〜16 (正常範囲) 16≦  計 
 1  24(5)  8 (1) 24  59 (6) 
 2  15(2)  50 (4)   12 (2)  82 (8) 
 3  37(2)   5 (1)  52 (6)   11 (2)  105(11) 
 4  2 (1)    8 (1)
 5 1  10 
 計  85(9)   21(3)  131 (10)   27 (4)   264名 (26名) 
 対照 18 (2) 21 (2)
 注:括弧内は10歳未満の子供
 
 入院時のコーチゾルは、全入院患者264名に対して106名(40.1%)が正常範囲以下になっていました。

 10歳未満の子供では、26名中12名(46.2%)が正常範囲以下になっていました。

 過去1カ月のステロイド外用量が5g未満の第2群では82名中12名(24.4%)、5〜50gの第3群で105名中42名(40.0%)、50g以上の第4群では8名中7名(87.5%)で、ステロイド外用量が増加するとともに統計的に有意にコーチゾル値が低下した患者の割合が増加していました。

 ところが、ステロイドを中止し、過去1カ月間全くステロイドを使っていない第1群でも、59名中32名(54.2%)という高率に、コーチゾルの低下が見られました。

 対照群では、コーチゾルの低下した患者は1例もいませんでした。

 一方、10歳未満の子供をみると、患者数は少なく統計的に処理できませんが、過去1カ月のステロイド外用量が5g未満の第2群では8名2名で(25.0%)、5〜50gの第3群で11名中3名(27.3%)、50g以上の第4群では1名中1名(100.0%)で、コーチゾル値の低下がみられました。
 子供について、ステロイドを中止し、過去1カ月間全くステロイドを使っていない第1群では、6名中6名(100.0%)とさらに高率に、コーチゾルの低下が見られました。

 
 表3に、入院時のACTH値の結果を示しました。
 
 

 
表3 入院時のACTHのまとめ
  ACTH(pg/ml)   
<10   10〜20   20〜30  30≦  計 
 17(1)  10(2)  5(1)  2  34(4) 
 9(3)  11(1)   22(2)  49(6) 
3   19(2)  20(4)  15   11(1)  65(7) 
4   6(1)  0  7(1) 
5 
計   53(7)  44(7)  28(1)   36(3)   161(18) 
 対照 3  9(1)  16(1) 
注:括弧内は10歳未満の子供 
 
 10pg/ml未満の低いACTH値は、161名中53名(32.9%)にみられ、過去1カ月間全くステロイドを使っていない第1群でも34名中17名(50.0%)に認められました。
 第2群では49名中9名(18.4%)、第3群では65名中19名(29.2%)、第4群では7名中6名(85.7%)で、10pg/ml未満の低いACTH値がみられ、ステロイド外用量が増加するとともに有意に低値の患者が増加していました。

 20pg/ml未満を低値と考えますと、161名中97名(60.2%)になり、コーチゾルよりもさらに低い例が多くなっていました。

 括弧内は10歳未満の子供を示しています。
 10pg/ml未満の低いACTH値は子供では18名中7名(38.9%)に見られましたが、20pg/ml未満の低値は18名中14名(77.8%)にみられました。

 以上、さらにまとめますと、

 コーチゾル値が正常域未満(4μg/dl未満)で、ACTH値が10pg/ml未満という下垂体機能不全の疑いのある患者は、第1群で13名、第2群で9名、第3群で21名、第4群で6名、第5群で6名いました。
 ステロイド外用量が多いほど、ステロイド内服など全身投与の患者に、より多く見られました。
 しかし、ステロイドを中止した患者でも多数見られました。

 副腎皮質の過形成などの疑いがあるコーチゾル値が正常域以上(16μg/dl以上)で、ACTH値が10pg/ml未満という患者は、第2群で1名いました。

 一方、副腎皮質機能不全の疑いがあるコーチゾル値が正常域未満で、ACTH値が58pg/mlという患者が第3群で1名いましたが、コーチゾル値が正常域未満でACTH値が60pg/ml以上という患者はいませんでした。


 入院時の湿疹とコーチゾルの関係を表4に示しました。

 
 
表4 入院時の湿疹の程度とコーチゾルの関係

  コーチゾル (μg/dl)  
 湿疹の程度 <2  <4  4≦  計 
 微症 1 1 3 4
 軽症
(肘窩・膝窩程度)
 7(1)  10(1)  41(2)  51(3) 
 中等症
(30〜60%の面積)
 32(3)  40(3)   81(11) 121(14) 
 重症
(ほぼ全身)
 45(5)  55(8)  34(1)  88(9) 
 計  85(9)   106(12)   164(14)   264名(26) 
 注:括弧内は10歳未満の子供の人数 
 

 活動性のある湿疹の面積によって、ごくわずかしかない微症、肘窩・膝窩などの汗部位に限局した軽症、汗部位を超えて全身の30〜60%に広がった中等症、ほぼ全身に広がった重症の4段階に分類しました。

 コーチゾル値が4μg/dl未満の低値を示した患者は、軽症患者で51名10名(19.6%)、中等症患者で121名中40名(33.0%)、重症患者で88名中55名(62.5%)であり、湿疹が重症になるほどコーチゾルのレベルが有意に低下していました。
 子供の重症患者をみると、9名中8名(88.9%)で低下していました。

 コーチゾル値がさらに低い2μg/dl未満の患者の割合をみると、軽症患者で51名7名(13.7%)、中等症患者で121名中32名(26.4%)、重症患者で88名中45名(51.1%)であり、同じように湿疹が重症になるほどコーチゾルのレベルが有意に低下していました。

 表5に入院時の湿疹の程度とACTHの関係を示しました。

 

表5 入院時の湿疹の程度とACTHの関係
 
  ACTH (pg/ml)  
 湿疹の程度 <10  10〜20  20〜30  30≦  計 
 微症 0 2 1 1 4名
 軽症 4(2) 9(1) 10 9 32(3)
 中等症  21(1)  15(4)  10   17(3)  63(8) 
 重症  28(4)  16(2)  7(1)  60(7) 
 計  53(7)  42(7)  28(1)    36(3)   159名(18) 
 注:括弧内は10歳未満の子供
 
 ACTHが
10pg/ml未満の低値の患者は、軽症患者で32名4名(12.5%)、中等症患者で63名中21名(33.3%)、重症患者で60名中28名(46.7%)であり、湿疹が悪化するとともにACTH値が低い患者の割合が多くなっていました。

 ACTHが20pg/ml未満を低値と考えると、軽症患者で32名13名(40.6%)、中等症患者で63名中36名(57.1%)、重症患者で60名中44名(73.3%)であり、同じように湿疹が悪化するとともにACTH値が低い患者の割合が多くなっていました。

 図1に過去1カ月間全くステ
ロイドを使っていない1群(2週間後にもう一度測定した28名)について、入院時と入院2週間後のコーチゾル値をプロットしました。

 
 
図1 入院時と入院2週間後のコーチゾル値(第1群)

 
 
 
グラフが重なって見にくいのですが、コーチゾル値が4μg/dl未満の19名について、1名は入院2週間後も正常域以下でしたが、他の18名はすべて正常域又は正常域以上になっていました。

 入院後、正常域から正常域以下に変化した患者は見られませんでした。

 図2に、入院前の1カ月にステロイド外用剤をごく少量、すなわち1カ月に5g以下を外用していた第2群(2週間後にもう一度測定した31名)について、入院時と入院2週間後のコーチゾル値をプロットしました。

 

図2 入院時と入院2週間後のコーチゾル値(第2群)
 
 
 

 同じようにグラフが重なって見にくいのですが、コーチゾル値が4μg/dl未満の9名について、すべて正常域又は正常域以上になっていました。
 16μg/dl以上のコーチゾルが高値の患者については、2週間後にはすべて低下していました。
 入院後、正常域以下に変化した患者は見られませんでした。

 図3に、ステロイド外用剤を入院前1カ月に5〜50gを外用していた第3群(2週間後にもう一度測定した40名)について、入院時と入院2週間後のコーチゾル値をプロットしました。

 
 

図3 入院時と入院2週間後のコーチゾル値(第3群)
 

 
 
 入院前の1カ月比較的多く(5〜50g)ステロイド外用剤を使用していた第3群については、入院時のコーチゾル値が4μg/dl未満の低値を示した患者19名の中で、1名はさらに低くなっていたが、残りの18名は正常域又は正常域以上になっていました。
 一方、入院時、正常域であった4名が、入院してステロイド外用剤による治療をうけて後、正常域以下になっていました。

 図4に、ステロイド外用剤を入院前1カ月に5〜50gを外用していた第3群(2週間後にもう一度測定した34名)について、入院時と入院2週間後のACTH値をプロットしました。

 
 
図4 入院時と入院2週間後のACTH値(第3群)

 
 
 10pg/ml未満の低値については、5pg/mlで表示しています。
 
 入院時ACTH値が10pg/ml未満の低値の患者11名の中で、入院2週間後にも10pg/ml未満であった患者が1名いましたが、他の10名は正常域に上昇していました。
 入院2週間後もACTH値が10pg/ml未満であった患者は(湿疹のレベルは重症で、入院後大量にステロイド外用剤によって治療されていました)、コーチゾル値も入院時4.4μg/dlから1.4μg/dlに低下していました
 入院2週間後のACTH値が上昇していた10名のうち6名は、依然10〜20 pg/mlの範囲にあり、湿疹状態に見合っただけの分泌量を示しているとはいえませんでした。

 なお、入院時コーチゾル値が0.0μg/dl、ACTH値10pg/ml未満であった患者については、残念ながら入院2週間後の採血をしていません。

 1名の患者が、入院時ACTH値31pg/mlで、入院2週間後ACTH値10pg/ml未満に低下していました。
 この患者は、コーチゾル値も入院時13.7μg/dlから2.2μg/dlに低下していましたが、同じように湿疹のレベルは重症で、入院後大量にステロイド外用剤によって治療されていました。

 入院時コーチゾルが低下していた9名(前値が4μg/dl未満)に対して、Rapid ACTH試験を行いました。
 コーチゾルが前値に対して2倍以上、又は10μg/dl以上増加したものを正常と判定しました。
 9名すべてACTHに反応しており、正常であり、副腎皮質機能不全は見られませんでした。

 図5にその結果を示しました。


 
図5 Rapid ACTH 試験の結果

 
 
 かんがえ

  結果をまとめますと、

 @.ステロイド外用量が多い患者ほど、コーチゾルやACTH低い患者の割合が多くなっていたこと
 A.ステロイド外用剤を大量に使っている重症患者ほど、コーチゾルやACTHが低下した患者が多くなっていたこと。
 B.入院後、ステロイド外用剤を大量に使用すると、コーチゾルやACTHが低下した患者がいたこと。
 C.もともとステロイド外用剤をほとんど使っていない患者は、入院中ステロイド外用剤を使ってもコーチゾルやACTH低下した患者はほとんどいなかったこと。
 D.ステロイドを中止したリバウンド状態においても、コーチゾルやACTHが低下した患者が多数いたこと。

 以上のことから、ステロイド外用剤は吸収されると、下垂体・副腎皮質系に影響を及ぼすことは明らかです。
 その悪影響は、Rapid ACTH試験の結果からみると、副腎機能不全ではなく、下垂体機能不全です。
 ステロイド外用剤は、もっと上部の下垂体を制御している視床下部に影響している可能性もあります。

 ステロイドを中止したリバウンド状態においても、コーチゾルやACTHが低下した患者が多数いたことは、それまでのステロイド治療が下垂体・副腎皮質系に影響を及ぼしていたために、本来必要な分だけコーチゾルが分泌されなかったと解釈されます。
 一種の下垂体・副腎皮質系の反応不全と思われ、それだけに入院後湿疹が軽快するとともに正常反応に戻ったと思われます。
 そうはいうものの、そんな反応不全に陥らせたものは、結局のところ長年のステロイド外用です。



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