アトピー性皮膚炎における
ステロイド外用剤の中止の判断基準と
その後の対策法 


出典
 遠藤薫:アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用剤の中止の判断基準とその後の対策。アレルギーの臨床、15(13)、951、1995
 
 はじめに


 
 近年、当科(大阪府立羽曳野病院皮膚科、現大阪府立呼吸器・アレルギーセンター)でもステロイド外用剤を望まないアトピー性皮膚炎患者がますます増加する傾向にある。
 しかし、しばしばステロイド外用剤の中止後にひどいリバウンドがみられ、その悪化した状態が長期にわたって続くことも多い。

 どのような患者がステロイドを外用せずに皮疹が軽快するか判断する必要があるが、いまだ明確な判定基準が示されていない。

 ここでは、私自身が外来・入院患者をステロイド外用剤を使用せずに治療する場合の判定基準を示すとともに、ステロイド外用剤以外の治療法について述べる。

1. 「患者本人がステロイド外用を望まない」

 これは非常に重要である。
 ステロイド外用剤の中止によって、皮疹は多少とも悪化することは避けられず、それだけに患者自身の自発的な意志は必須である。
 一方、ステロイドの中止が患者を客観的に判断して好ましくないという明らかな要件があれば、患者に対してその選択を選ばない方がよいと懇切に説得すべきである。
 もし、ステロイド外用剤を中止することの明らかな否定要件がない限り、医師と患者の間のコンプライアンス(信頼関係)の問題もあり、患者の意向を無視することはできない。

2. 「ステロイド外用剤による悪化」

 ステロイド外用剤を使用し始めて、むしろ少しずつ皮疹が拡大したと訴える患者は少なくない。
 皮疹の悪化がステロイド外用による全身的・局所的な免疫抑制が一因となっているときは、リバウンド後、皮疹は徐々に軽減することが多い。
 皮疹の形態として、毛孔一致性の丘疹が多発しているとき、それが融合してびらん局面を呈しているとき、皮疹は掻爬と外用剤によって生じた二次的なものと考えられる。
 従って、消毒、亜鉛華軟膏などの外用剤とガーゼ保護で掻爬を抑制すれば、容易に軽減する。

3. 「外用剤による接触皮膚炎の既往」

 非ステロイド系外用剤によるいわゆる「かぶれ」は少なくない。
 ステロイド外用剤で接触皮膚炎を生じている場合も多い。
 その場合、主剤(ステロイド成分)だけでなく、主剤を溶かしているワセリンなどの基剤、その他様々な添加物が原因になっていることも多い。
 イソジンなどの消毒液もかなりの割合で接触皮膚炎を起こす。
 また、化粧品などによるかぶれの既往も重要である。
 この場合、外用剤なしで経過をみることも有効である。
 ドライスキンがひどければ、オリーブ油などの植物性基剤、馬油などの動物性基剤、時には化粧水や市販の水も用いることがある。
 抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤の薬疹(特に光線過敏性)にも注意することが必要である。

4. 「皮疹の悪化要因が除かれている」

 「ステロイドを中止する場合、中止によって改善するところは、ステロイド外用剤による副作用が排除されるだけである」と必ず患者に説明している。
 従って、悪化要因が多少とも除かれていなければ、ステロイド外用剤を止めると皮疹は悪化するだけである。
 アトピー性皮膚炎の悪化要因は、
   @ストレス
   A感染症
   B環境要因
の3項目に要約される。
 アトピー性皮膚炎は「公害病」でもあり、入院した場合はともかく、悪化要因を容易に排除できないことが多い。

5. 「社会的適応」

 ステロイド外用剤を中止すると、リバウンドは必発かもしれない。
 となると、その間仕事ができない可能性がある。
 ということは、折角皮疹が軽快しても、不景気な世の中でもあり、仕事を「クビ」になってしまえば何の為に治療したのか分からない。
 湿疹がひどくなって休んでも「クビ」にならない仕事でないと、ステロイドの中止は無理かもしれない。
 職業でいえば、公務員、主婦、大学生といったところ。

6. 「患者及び家族の性格と精神状態」

 神経質で、抑うつ的で、不信感の強い患者や家族がいると、なかなかうまくいかない。
 私自身、医師と患者・家族との信頼関係が築けなければ、ステロイド外用剤の中止はすすめないことにしている。
 性格テストのYGテストでいえば、B型はステロイド中止による治療は困難である。
 とにかく、性格的にのんびりした、精神的に安定した患者さんの方がよいが、そんな患者さんはごく少数である。

7. 「検査所見からみて」

 IgE値は低い方がよいし、RAST値陽性数は少ない方がよい。
 白血球系の機能が異常で感染症を繰り返すタイプは、ステロイドを外用しても治療が難しいところがある。
 というものの、検査所見だけでは判断できないときもある。
 検査所見の異常が多く、湿疹のレベルが超重症の方がやりやすいところがある。
 湿疹があまりにも著明な患者は、ステロイドを外用してもよくならない傾向がある。
 それだけに、ステロイド外用剤以外の治療を選択するのも、一つの方法である。


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