4. 水痘(すいとう、みずぼうそう)
ヘルペスウイルス科のウイルス(HHV) |
HHV1 単純ヘルペスT型
HHV2 単純ヘルペスU型
HHV3 水痘−帯状疱疹ウイルス
HHV4 EBウイルス
HHV5 サイトメガロウイルス
HHV6 突発性発疹
HHV7 突発性発疹 |
水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)で起きる感染症です。
VZVは、ヘルペスウイルス科αヘルペスウイルス亜科のDNAウイルス(HHV-3)です。
麻疹に次いで感染力が強い、といわれます。
咳や唾液が飛んで感染します(飛沫感染)。
潜伏期間は14〜16日です。
主として、6カ月から6歳の子供にみられます。
成人がかかると重症化することが多いようです。
春から初夏に流行します。
前駆症状として軽い発熱、食思不振(食欲の低下)がある場合あります。
小さな紅斑から始まり、すぐに小水疱となります。
周囲が紅くなった小水疱となり、さらに小膿疱、痂皮に変化し、あちこちに多数できてきます。
発疹は、新しい発疹と古い発疹が同居しています。
強いかゆみがあります。
しばしば顔面から始まり、体に広がりますが、四肢には数は少ないようです。
日焼けしたところ、おむつ部、ギブスの下などに多発します。
頭の髪の毛の中や口腔粘膜にもできます。
発疹が出ると同時に発熱がみられますが、1〜2日で平熱に戻ります。発熱のみられない患者もいます。
7〜10日で瘢痕を残して治癒します。
16歳高校生にみられた水痘です。
バルトレックスを内服して治癒した状態です。
黒色の痂皮が散在しています。
合併症は成人に多く、肺炎、肝炎、脳炎などがみられ、死亡することもあります。
AIDS、悪性腫瘍、ネフローゼ、ステロイド内服中などの免疫が低下している患者は重症になりやすく、しばしば出血性となります。
妊婦が感染すると、しばしば重症になります。
肺炎を合併することも多いようです。
妊娠8〜20週までの妊婦では、胎児に、ときに先天性水痘症候群(頻度8〜12週が0.4%、12〜20週が2%。瘢痕性皮膚病変、小眼球症・白内障・視神経萎縮、四肢の低形成、大脳萎縮など)がみられます。
VZVは抗体ができてくるとともに神経節のサテライト細胞に潜伏感染します。
一度感染すると、一生免疫ができます(終生免疫)が、きわめて初期から抗ウイルス剤を用いると十分な抗体ができていないこともあります。
学校は完全に痂皮化するまで登校・通園禁止です。
血液検査では、白血球減少、血小板減少、AST・ALTの上昇などがみられます。
抗VZV-IgM抗体は7〜10日ころより上昇します。
治療は、子供の場合、たいていは抗ウイルス剤の内服です。
以前は軽症の水痘には、外用剤だけで経過をみたこともありました。
最近は、初期から抗ウイルス剤(ゾビラックス、バルトレックス)の内服が投与されます。
成人水痘の場合、重症のとき、入院して抗ウイルス剤を点滴することもあります。
抗ウイルス剤はウイルスの増殖を抑えるだけで、すでに増えたウイルスを殺すものではありません。
それだけに、あまり増えていない時期から早めに使うほど効果的ということになります。
また、吸収に個人差があるために、吸収がよくないために患者の中には効かない人もいます。
逆に、点滴1回量(250mg)と比べて量が多く(800mg)、この薬剤が過剰に吸収されて、腎障害や脳症を引き起こすことがあります。
抗ウイルス剤がウイルスが増えるのを抑えるということで、その間増えたウイルスを患者の抗体や白血球が処理するために、その免疫系ができるまで、だいたい1週間くらい抗ウイルス剤の投与が必要です。
子供では、ゾビラックス(アシクロビル)顆粒を1日4回内服、または、バルトレックス(バラシクロビル)顆粒を1日3回内服します。
成人型水痘では、ゾビラックス(400mg)錠を1日に10錠を5回に分けて内服するか、バルトレックス6錠を1日3回内服します。
外用剤は、かゆみがあり、二次感染の防止をかねて、昔からフェノール亜鉛華リニメント(カチリ)が用いられています。
明らかな細菌感染を伴っていれば、抗生剤の内服や外用剤を併用することもあります。
入浴は、完全に痂皮化するまでシャワー程度です。
予防として、水痘ワクチンがありますが、生ワクチンで、任意接種です。
アトピー性皮膚炎を悪化させる要因・きっかけの一つに感染症が上げられますが、そんな感染症の中で最も多いウイルスではこの水痘です。
私は、乳幼児のアレルギー患者さんには、水痘のワクチンを勧めています。
水痘の抗体ない新婚さんも、水痘ワクチンをやっておいたほうがいいでしょう。
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