1. 手足口病(Hand-Foot-Mouth disease)
                               

ピコルナウイルス科のウイルス   ”ピコ”は小さいということ
                      一本鎖プラス鎖RNAウイルス、
エンテロウイルス属
   
 ポリオウイルス
 ポリオウイルス1〜3
 ヒトエンテロウイルス コクサッキーウイルスA2-8,10,16
エンテロウイルス71,76,89-91
 ヒトエンテロウイルス コクサッキーウイルスB1-6,A9
エンテロウイルス69,73-75,77-88
エコーウイルス
 ヒトエンテロウイルスC コクサッキーウイルスA1,11,13,17
エンテロウイルス95,96,99,102,104
 ヒトエンテロウイルスD エンテロウイルス68,70,94 
 ヒトライノウイルスA  ライノウイルス1,2,7-13,15,16,18
 ヒトライノウイルスB  ライノウイルス3-6,14,17,26,27,35
 ヘパトウイルス属  A型肝炎ウイルス  A型肝炎ウイルス


 手足口病は、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属の一本鎖RNAウイルスであるエンテロウイルスとコクサッキーウイルスによる感染症です。
 ポリオウイルスもまたエンテロウイルス属に入っています。
             *エンテロは腸のこと

 なお、ピコルナウイルス科には、
他に、風邪の原因ウイルスとして重要なライノウイルス属や、
A型肝炎ウイルスを含むヘパトウイルス属などが分類されています。

 エンテロウイルス属のウイルスは非常に種類が多く、最も頻度が多いものは、エンテロウイルス71コクサッキーA16、A10などです。

 ポリオと同様に腸管内部でウイルスが増え、便排泄物から、経口または経気道感染します。
 夏に多く、夏風邪の原因にもなります。

 免疫機能が正常に働いていれば、感染しても症状が現れない(不顕性感染)ことも多いようです。

 主に乳幼児や小児がかかりますが、ときに免疫が低下した成人もかかることがあります。
 普通はほとんどが症状が現れない不顕性感染ですので、成人や小学生高学年以上の子供に症状が出ると、しばしば重症になります。

 エンテロウイルスとコクサッキーウイルスが、約5年周期で交互に流行を繰り返します。

 潜伏期間は3〜5日です。

 手のひら、足の裏に小水疱、小紅斑が現れます。
 ときに、肘、膝、おしりなどにもできます。
 口内炎がひどく、強い痛みがあり、食べられないこともあります。
 体がだるく、軽い発熱があり、ときに下痢・嘔吐が見られます。
 
 数日から1週間くらいで軽くなります。

 近年、外国(台湾?)から新しいタイプの手後口病が蔓延しています。
 コクサッキーA6が原因ウイルスといわれています。
 手足や口に発疹がないこともあり、体や四肢に水痘に似た水疱が散在性に生じることがあります。
 高熱が出ることもあります。

 呼吸器感染後に現れる喘息様気管支炎の原因ウイルスとしては、RSウイルスとライノウイルスが多数を占めています。
 エンテロウイルスは、呼吸器の感染症も起こします。
 平成22年には、エンテロウイルスD68が喘息様気管支炎の原因の一つになっています。

 平成27年10月に国立感染症研究所が、エンテロウイルスD68の感染症により、0歳〜11歳の子供に原因不明の麻痺(まひ)が生じたと報じました。
もともとこのウイルスは以前から北米で広がっています。
エンテロウイルスはポリオの親戚ということから、ポリオ様麻痺は起きて当然ということです。

 まれに、髄膜炎、心筋炎、ポリオ様麻痺・小脳炎などの重篤な合併症があります。

 爪の変形、根元からの爪の脱落、爪甲剥離の報告もあります。
 平成23年の手足口病では、この爪の症状で患者さんが何人かやってきています。

 治癒するまで学校は出席停止ですが、予防措置していれば出席を許可されます。
 ただし、症状がよくなっても患者からウイルスの排泄が数週間にわたって続くために、結局、患者さんいる保育園児や幼稚園児全員が感染することになります。
 このことは、抗原と抗体や免疫担当細胞が同時に長く存在することを意味しており、アレルギーが起きやすい状態です。

 手足に限局した紅斑や落屑、全身の蕁麻疹反応などは、手足口病のアレルギーの可能性があると説明しています。
 2011年春から夏にかけて、手足口病にかかってから体幹や四肢のかゆみのある湿疹がみられる患者さんがいます。

 なお、ポリオのワクチンで40℃を超える発熱があったという乳幼児アトピー性皮膚炎がこれまで何人も経験しています。
 幸いはっきりした麻痺がでた患者さんを私は経験していませんが、免疫の低い乳児には、ポリオワクチンは生ワクチンよりも不活化ワクチンの方がよいかもしれません。
 不活化ワクチンにすると、今度は免疫ができにくくなる可能性はありますが・・・


手掌と手指に水疱と紅斑がみられます。ごく典型的な手足口病で、同じものが足の裏にあり、口の中にも水疱があり、食事がとりにくい状況です。


水痘にとても似ていますが、体幹の手足口病と思われます。
体幹に紅斑・丘疹があり、中心に水疱が見られます。
発疹の周辺に紅斑があり、アレルギー反応も起きています。
新しいタイプの手足口病です。
平成23年のものはコクサッキーA6が原因ウイルスということです。



手足口病による足背の小紅斑と小水疱です。


足の裏の小紅斑。
手足口病と考えられますが、典型的な発疹ではありません。



子供の手足口病後に見られた爪の変形です。
右足の親指の爪が根元からなくなっています。
下に新しい爪があり、このまま生え替わるまで経過を見るように説明しています。
2番目や3番目の爪の根元もいくらか白くなっています。



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