およそ2年にわたって、アトピー性皮膚炎に関係したいろんな問題を様々な観点から取り上げてきた。 今回この連載を終えるに当たり、それらの問題点をもう一度まとめてみたい。 治療から言えば、積極的に湿疹を抑えるものとしてステロイドにまさるものはないが、病気の原因そのものを除くわけではない。 ただ、湿疹があるために悪循環を繰り返しているときは、それを断つために用いた方がよい。 しかし、長期的にみると、ステロイドが悪化を招いた例は少なくない。 一方、かゆみを減らす治療として、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服が行われるが、正直なところそれほど効果がない。 IgE抗体やヒスタミンは、湿疹にはあまり関与していないということだが、実際のところアトピー性皮膚炎はアレルギー疾患ではないという意見さえある。 さらに、いわゆる「皮膚が弱い」という体質がある。皮脂の組成に問題があり、軽い炎症と角化異常が加わり、できた乾燥肌(ドライスキン)は外的刺激に弱い。 保湿剤が用いられるが、自分の皮脂に優るものはない。 また、外用剤による接触皮膚炎に対しては常に注意を払う必要がある。 アトピー性皮膚炎の治療の基本は、湿疹の原因あるいは悪化要因を明らかにして、それを排除することにある。 しかし、原因の究明は容易ではなく、また簡単に除けないことも多い。たとえば、乳幼児のアトピー性皮膚炎の最も多い原因は感染症にかかりやすいことにあるが、治療としては、結局子供の免疫機能の完成を待つしかない。 仕事や生活環境に問題あると指摘しても、どうすることもできないことも多い。 皮膚疾患に共通するものとして、精神的要因がある。他の人に見えることは患者にとってかなりのストレスになるが、そのうちに湿疹そのもの、あるいはその治療そのものがしばしば精神的影響を及ぼすようになる。 家族を含めた周囲の理解が非常に大事であるが、生命に関係ないものを病気とは認めないような冷たさに怒りを覚えることもある。 私自身としては、患者がそのうちよくなるといった気楽な気持ちになるようにあれこれやっている次第である。 |