アトピー性皮膚炎と「単純ヘルペス」

Q.
25歳の会社員です。2日前から、顔と首にかけて、みずぶくれのようなものができています。
昨日、39℃の熱がでて、全身だるいです。子供のときからアトピー性皮膚炎があります。

A.
アトピー性皮膚炎の患者に合併するウイルス感染として単純ヘルペスがある。

単純ヘルペスは、口唇によくみられるT型と陰部などに多いU型に分けられる。
単純ヘルペスは神経組織に潜伏し、ぴりぴりした痛みと違和感があり、ときにかゆみもある。

ヘルペス属のウイルスは他にもいろいろあり、水痘・帯状疱疹、EBウイルス、突発性発疹の原因ウイルス(HHV-6、HHV-7)などもヘルペスの一種である。

アトピー性皮膚炎患者は単純ヘルペスに対して免疫力がないことが多く、しばしば口唇ヘルペスやヘルペス性口内炎をくりかえす。
ときに全身に広がることがあり、これをカポジ水痘様発疹症といい、顔面や頸部に多く、しばしば発熱や全身倦怠感を伴う。溶連菌感染症などの細菌性の二次感染を合併することがあり、このときは小水疱が膿疱となり、汚い痂皮(かさぶた)が多数できる。
眼の周囲にできることも多いが眼ヘルペスを合併することは少ない。

また、単純ヘルペスは日光にさらされると活性化することがあり、日光が当たる顔面などに多い。
単純ヘルペスは同じ部位に何度もくりかえす場合が多い。
ちなみに帯状疱疹が2度以上できるのはまれである。
ヘルペス属のウイルスは患者の免疫が低下したときにできる傾向があり、その意味で、睡眠不足などの肉体的・精神的ストレス、風邪症状、胃炎その他の内科的疾患が引き金となる。
治療としては、まず低下した免疫をもとに戻すことが重要である。十分睡眠をとり、たまったストレスを減らす必要がある。

薬剤治療は抗ウイルス剤の外用・内服が多いが、発熱などの全身症状があれば点滴が必要になる。
細菌感染が合併しているときは、抗生剤の内服も併用される。
抗ウイルス剤は細菌に対する抗生剤と異なり、効果が現れるまで多少時間がかかる傾向がある。
一、二日くらいは拡大を止める程度であり、三日目以降になりようやく効果が現れることも多い。
副作用としては発売当初は腎障害などがいわれたが、実際にはほとんどないに等しい。
それ以上に薬剤の吸収にばらつきがあり、内服では薬剤が十分吸収されないために効果が少なく、仕方なく点滴で治療するしかないこともある。


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