アトピー性皮膚炎と「温熱療法」

Q.
2、3年前からおしりに湿疹ができて、ステロイドをぬっていますが、なかなかよくなりません。
何かよい治療法はありませんか。

A.
臀部のアトピー性皮膚炎の湿疹は、長く座る生活が始まったころからしばしば見られる。
小学生や幼稚園に入学してから、塾などで長い時間勉強するようになると、特にひどくなりやすい。
臀部に接触する衣類の素材、椅子の種類によっても影響を受ける。

アトピー性皮膚炎はもともと乾燥肌(ドライスキン)があり、こすれたり、洗ったり、いろんな刺激に弱い傾向がある。

臀部の乾燥肌に対しては、汗がたまったり、外的刺激が加わることで、かゆみや湿疹が出現し、ひっかくと細菌が付着してさらに悪化する。
ステロイドを外用していると、盛り上がった湿疹がばらばらにちらばった痒疹型に移行することも多い。
その意味で、臀部の湿疹が治りにくくなった場合、掻爬による悪化をいかにして防ぐかが課題となる。

以前より、皮膚リンパ腫など皮膚の疾患で温熱療法が有効とされている。
アトピー性皮膚炎などの湿疹に対しても、ステロイド外用剤を使用しない治療として、この温熱療法が用いられる。

皮膚を50℃程度に暖めると、リンパ球の働きが抑えられ、免疫反応が抑制される。
また熱によって、黄色ブドウ球菌などの細菌を殺すことができる。
体が暖まり血液の循環がよくなり、かいた汗が乾燥した皮膚の水分補給や保湿にもなる。

温熱療法の方法は、服の上からはるカイロが簡便である。手背の湿疹のときは、綿手袋の上にはる。

使い捨てカイロは最高温度と持続時間が表示されているが、最初は少し温度の低いものから始め、効果がなければ温度を高くする。

衣類がうすいとき、カイロの温度が高いときは、低温熱傷に特に注意する必要がある。
熱傷の心配から考えると、昼間に試みる方がよい。
夜間寝るときは絶対にやってはいけない。
幼児は訴えが不十分であり、この治療には向かない。

湿疹のタイプは、痒疹型、結節型が最も有効であるが、貨幣状型や紅斑型でも有効である。
部位としては、おしり、腰回り、手首、手背、足首、下腿の湿疹に向いている。


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