アトピー性皮膚炎と「温泉」

Q.
30歳のOLです。
子どものときから湿疹がありますが、高校生ころからステロイドは使っていません。
温泉がアトピーによいということですが・・・

A.
昔から温泉は皮膚病によいとされ、和歌山県には龍神温泉をはじめ美人の湯で有名なところが数多くある。
そんな皮膚病の中にアトピー性皮膚炎も含まれる。

温泉のアトピーに対する効能としては、
  @.四肢が冷たい患者の末梢循環の改善、
  A.掻き傷・びらんの多い患者の消毒・洗浄、
  B.外用剤の合わない患者の保湿剤としての温泉水、
  C.世俗の煩悩から来るストレスの解消、
  D.都市生活が作る様々な化学物質からの避難効果(環境改善)
などが上げられる。

ただし温泉水そのものに薬理作用があるかと言うと、今のところ医学的に評価されたものはない。
それだけに、何百万という値段で温泉水を宅配する話はビジネス以上のものではない。

合った温泉のタイプは、患者それぞれで違ってくる。
皮膚の感染症を繰り返している掻き傷の多い患者は消毒効果がある酸性の温泉の方がよいが、皮膚刺激が強いときは、長時間入らない方がよい。
また、硫黄の臭いが強くなると、喘息に対してはよくないこともある。
尋常性乾癬に似た発疹のアトピーも硫黄を含んだ温泉が向いている。
全身の乾燥肌が強いときは単純泉や炭酸水素塩泉の方がよいが、アルカリ性が強いと角質が柔らかくなりすぎて、長く入るには向かない。

一般に、アトピー性皮膚炎患者は体が暖まったり、汗をかくとかゆくなる。
それは自宅の風呂も温泉も同じだが、繰り返して入浴していると少しずつかゆみが減ってくることがある。
汗がかゆい人に、むしろ積極的に汗をかくように指導しているのと同じことである。

不景気な時代にどうかとも思うが、時間と予算が許せば、ひなびた温泉宿でのんびりするだけで、治りにくいアトピー性皮膚炎も少しずつよくなる。
皮膚の感染症のことを考えれば、他にアトピー患者があまりいない温泉の方がよいかもしれない。


INDEX
Q&A