アトピー性皮膚炎と「とびひ」

Q.
3歳の男の子です。
それまで乾燥肌があるくらいでしたが、2月にインフルエンザにかかってから体のあちこちに湿疹ができて、かきむしるようになりました。
10日ほど前に首のあたりに丸い湿疹ができて、小児科で消毒とゲンタシン軟膏をもらっていました。
少しずつ数が増え、2日前から急に顔や手足にも広がってきました。
本人はかゆがりますが、熱もなく、元気です。

A.
黄色ブドウ球菌によるとびひ(伝染性膿痂疹)と思われます。
とびひは春から夏にかけて、子供のアトピー性皮膚炎によくできます。
湿疹ひどくてかゆみが強いと、どんどんひっかいて広がります。
形としては、にきびのようなものから、屋根のこわれた東京ドーム、阿蘇の噴火口のようなものまでいろいろあります。
ひっかいて自分でうつすために、顔、胸、手足など手が届きやすいところに広がります。
お互いに接触しても感染しますが、塩素の少ないスイミングスクールや幼稚園などのプールでもらうこともあります。

とびひの原因になる細菌には、黄色ブドウ球菌の他に溶血性連鎖球菌(溶連菌)が重要です。
溶連菌のとびひは、膿のついた小さなブツブツが見られます。
血液中に広がると、熱がでて、体がだるくなります。腎炎や心内膜炎の原因にもなる細菌です。
溶連菌はもともと扁桃腺に常在していることがあります。

溶連菌のとびひとよく似た発疹として、単純ヘルペスによるカポジ水痘様発疹症があります。
単純ヘルペスは口唇や陰部に水疱をつくるウイルスですが、体内で広がると高熱が出ます。

とびひの治療は1〜2個の初期なら、触らないように注意して、消毒(イソジン液など)と抗生物質の入った軟膏でもよくなります。
しかし、広がると抗生剤の内服が必要になります。湿疹が感染症の悪化の原因になっているときは、ステロイドを外用して同時に湿疹をなおすしかないこともあります。
抗生剤を繰り返して使っていると、細菌は耐性化(抗生剤が効かなくなること)して、耐性型の黄色ブドウ球菌(MRSA)に変化することがあります。
ただ、A群溶連菌やカポジは抗生剤の全身投与が必要です。

感染症は様々なアレルギーを呼び起こし、アトピー性皮膚炎の悪化の原因になります。
逆に言えば、子供のアトピー性皮膚炎の治療の基本は、できる限り感染症を避けることということになります。

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